2013-11-24

名刺のデータベース化

スキャナーを使って、名刺のデータベースを作れば便利、という話。


スキャン狂い

自分は留学に行く直前、3年ほど前にScansnapを買ったのだが、それ以来すっかりスキャン狂いになってしまった。留学先でもらう山のような書類ももらった先からスキャン→廃棄していたし、ノートもスキャンするようになってからは大学ノートではなく一枚一枚取り外しが容易なレポート用紙に切り替え、ノートを取った先からスキャンしていた。

※ただし、留学からの帰国時に外付けHDDが壊れて、そういったファイルのうちバックアップし忘れていた一部が消失してしまったので、スキャン偏重のリスクも痛感させられたのだが...

そういう習慣がついてしまったので、ふたたび働くようになった今でも、人一倍スキャンを活用している。人からもらった書類もすぐさまスキャンしてすぐ捨てちゃうし、名刺もどんどんスキャンしている。紙として保存しているのは、Ongoingの案件の資料くらいで、それでさえ携帯している必要がない書類はどんどんスキャン→廃棄している。


スキャンは駄目だよ、だって...

そういうスキャン大好き人間なので、とりわけ、名刺を物理的に保存・管理している人を見るとものすごくもぞもぞ・背中が痒くなってしまう。

  • 机の棚のかなりの部分に過去十数年蓄積した名刺を溜めている人
  • 名刺がたまると、「銀行系」「友人系」とかジャンル別に名刺を物理的に再整理している人
等を見ると、どうも苦笑いしてしまう。

おそらくそういった人々も、名刺をスキャンして管理するという手法があること自体は認識していると思う。ただ、自分もかつてはそうだったが、名刺のスキャン管理ではいくつか入口に精神的ハードルがあって、「いやー、だってスキャンすると●●じゃん?だから敬遠しちゃうんだよねー」という会話が繰り返される。


1. スキャナーってスキャンにすごく時間がかかるではないか:

ういーん、がしっ、がしっ、がしっ。ギーコ、ギーコ、ギーコ。そんな感じで、一つの名刺をスキャンするのに3分くらい時間がかかるのではないか?そういった懸念を持つ人は、もう少ないとは思うが、まだまだ存在する。



2. 専用の管理ソフトを使う必要があるのではないか:

いろいろある名刺管理ソフトの一つを購入・インストールしないと、名刺のスキャン管理ができないのではないか、という発想。

また、得てしてそういった名刺管理ソフトは、自宅のPCにはインストールできても会社のPCには入れられないので、ビジネス上の使い勝手が悪いという判断を惹起しうる。

さらに言えば、そういった名刺管理ソフト用のデータは、専用の拡張子で保存されるので、他のPCでは開くこともままならないという懸念も想定される。


3. 文字認識(OCR)に時間がかかるのではないか

名刺をスキャンしたら、氏名とか電話番号とかを文字認識機能(OCR)を使って読み取っていたら、名刺一枚当たり1,2分かかってしまい、とてもじゃないが忙しい自分としてはその時間は勿体ない、という発想。

以下では、そういった懸念を払拭するような名刺管理のやり方について一例を挙げてみたい。


スキャナーによる名刺管理:基本

1. スキャナを用意

まず、スキャナを用意する。市販のスキャナを買うか、会社のプリンタにスキャン機能がついていると有難い。

何だかんだいって、ここが最大のハードルにはなってしまう。スキャナで有名どころはScansnapだが、Amazonでぱっと検索してもやっぱり4万~5万円と高い。

2. スキャンして、単にPDF化するだけにする

ここがある意味ポイント。特定の名刺管理ソフトも使わないし、そういった管理ソフトのための特別なファイル形式にもしない。ただ単に、PDFにするだけ。

これにより、他のPCでも閲覧できる互換性が確保されるし、名刺管理ソフトを買う必要がなくなる

3. ファイル名に各種データを入力してしまう


最終的に、スキャンした名刺PDFをひとつのフォルダにまとめて保存して、エクスプローラの検索機能にてデータを検索できるようにしたい。

なので、本来なら名刺管理ソフトにピコピコ入力したりOCRで読み取らせたりしていた主要な情報を、すべて名刺PDFのファイル名に入れてしまう。社名、氏名、出会った日、出会った案件名等々。

スキャナーによる名刺管理:応用

4. Evernoteの活用

上に挙げた1.~3.を実行することで、PCにおいて名刺をデータベースとして管理することができるが、さらに、Evernoteを活用することにより、そのデータのクラウド化が可能になる。

ひとつひとつのPDFファイルをこまめにEvernoteにアップしてもいいし、Scansnapの機能で「スキャンと同時に読み取ったファイルをEvernoteに送る」というものがあるのでそれを使っても良い。

いずれにせよ、スキャンした名刺PDFをEvernoteにアップロードすることで名刺データのクラウド化ができて、例えばiPhoneでさっとデータにアクセスできるようになり、「出先で、半年前に会った●●証券の杉本さんの電話番号ってなんだっけ?」みたいな問題に直面してもパッとデータを見ることができる。

5. PDF名刺データ印刷時のTips

そういった名刺PDFは、通常表と裏両方をスキャンするのだが、ふつうに印刷してしまうと表で1ページ裏で1ページと、なんだか非効率なハードコピーが出てきてしまう。

なので、PDF名刺データを印刷するときは、印刷設定において、「複数ページをまとめて印刷」「まとめて印刷するページ数:2」という設定で印刷すると、ひとつの頁に名刺の表裏両方が印刷できる。


でも、まあ、最後は価値観しだい

と、ここまでスキャナーを活用した名刺管理の簡単なやり方について述べてきたが、自分は「名刺はスキャンすればよく、物理的に貯めこむのはナンセンス」とは思っていない。

まず、スキャナは高い。スキャナに対する数万円の投資は、大いに判断が分かれるところだと思う。また、仮に職場にスキャナがあったとしても、仕事時間中にずっとスキャンしてたら、まるで働いていないような雰囲気になってしまうという懸念もあるかもしれない。

また、ビジネス上の考え方として、名刺に精神的な意味合いみたいなものを持つ人がいて、名刺を捨てるなどとんでもないという考え方もあると思う。たしかに自分も、そんなに声を大にして「名刺はどんどん捨ててます」とは言うのを憚られている。

また、データ化・インデックス化するよりも、「渡辺さんの名刺は、えーっと、机の何段目の奥の方にある、赤い名刺ケースの真ん中くらいだったかな?」というより手触り感のある覚え方を好む人もいるだろう。

なので、ここで書いているスキャンによる管理は、百人いれば百人ある名刺管理方法のひとつを披露したに過ぎず、他の手法をけなすものではないことは最後に付記しておきたい。

ついついこういうTipsを身につければつけるほど、「俺のやり方すげー、すなわち、他のみんなはショボイ」と言う感じで自己尊大になったり他人を馬鹿にしたりしてしまうので、そういったことは回避せねばならない。そういった罠に陥るくらいなら、トラディショナルなやり方で名刺管理した方がマシとさえ思うので、自分としても注意したい。

2013-11-02

プロフェッショナル

「ぼくのかんがえるプロフェッショナリズムについて」という話。

プロの皆さん


留学から帰って以来、部署の職務内容のおかげだったり留学友達の関係だったりで、いわゆるプロフェッショナル(弁護士、会計士、コンサルタント、投資銀行のバンカー、PE)と仕事で関係する頻度が増えた。その結果、書くとなんとなく恥ずかしいのだが、プロフェッショナリズムというものについてかなり意識させられている。

以下には、プロらしさの構成要素として考えられるものについていくつか述べてみる。

スキル

ひとつわかりやすいものとして、スキルの高さが挙げられるだろう。M&A関連の契約に精通した弁護士、買収時の税務イシューに詳しい税理士、モデリングのスキルetc.やはり、そういったスキルを持つ人はプロであると感じる。

だが、スキルだけではプロフェッショナルという概念を説明しきれない気がしている。例えば、

  • スキルがあまり高くないアソシエイト級の弁護士やバンカーを見ても、それはそれでプロフェッショナリズムを感じるのはなぜか?
  • メガバンクの人とか、仮に特定の部署に長年所属していて当該分野に詳しかったとしても、プロと思えないのはなぜか?
など、スキルだけを変数としてもプロフェッショナルを説明しきれないように感じている。そういうことを感じるようになってからは、プロフェッショナルを構成するものとして、スキル以外に何があるか考えていて、例えば以下のようなものが挙げられるのではないかと思っている。

ルールを持っている

たとえばゴルゴ。依頼は複数抱えないとか色々な「My Rules」を持っており、かなり頑固にそのルールを厳守するし、相手にもそれを強いる。

思うに、そういった頑固さやルール一つ一つの是非自体がプロフェッショナルの本質とは思えない。単に頑固な人とか、それはむしろ柔軟性がないという意味でプロフェッショナルではないと思うし。

他方、「自分のルール=流儀をもち、それをApplyする」という方法論にはプロフェッショナリズムを感じる。なんというか、その場でスクラッチから「どうやってやるか」というところから検討されてしまうと、依頼する側としては非常に不安になってしまう。自分の考え方ややり方の引き出しをもっていて、カスタムメードが求められる現場においても、ゼロから考えるのではなく、既存の引き出しや流儀を適宜組み合わせつつ当てはめるような方法論を持つ人に対しては、自分はプロフェッショナリズムを感じる。

「そういうときは、定石としてはXXXという手法を使います」
「定石としてはXXXですが、状況の特殊性を踏まえ、やや応用になりますがYYYでやりたいと思います」といった感じで、当該分野におけるベース/引き出し/ルールを持っている人はプロ的であると思われる。

自前主義でない


アマチュアによくあるのは、何でもかんでも自分でやろうとして、結果として最善の結果に到達できていない人。

プロフェッショナルは、結果から逆算して、「誰にどう頼んだら、いちばんベストの結果になるか」という発想でやっている人が多い。「人に頼むことでプライドが云々」とか、「まずはできる限り自分でやってみて、どうしてもできないところだけ他人に頼む」とか言う発想は、新人研修的には有用な発想かもしれないが、プロフェッショナルとして高い報酬を貰うのであればそれは邪魔な発想だと思う。

ゴールに一直線

目的をきちんと見定めていて、常にそこへの最短距離を目指すような人には、プロフェッショナリズムを感じる。

換言すると、まず、目的が明確化されていない人はアマチュアを感じる。PJの遂行なのか、関係者のコンセンサス取得におけるソフトランディングなのか、自分のプライドの充足なのか、なんでもいいけど、そういった目的候補のなかのいずれを究極的な目標にするのかあいまいな人は、結果として行動もフラフラしており、アマチュアであると感じられる。

あるいは、目標と定めたこと以外に拘泥する人もアマチュアである。例えば
  • 相手との交渉の前に、どうしても一回事前ミーティングしておく必要があるが、交渉の日程が決まったのが前夜。当日の朝に事前ミーティングをする必要がある。そういうとき、プロは、無理やりにでもあるいは前夜の深夜にでも、電話か何かできちんとミーティングを行う。他方、アマチュアは、「日程調整が遅い」とか「俺は聞いていなかった」とか四の五の言って、結局ミーティングが開催されず、中途半端な交渉をして負ける。
  • PJのメンバーにアサインされた人。プロは、ゴールから逆算して必要になるタスクを速やかに洗い出し、それぞれのタスクを最適な担当者に振り分けることを考える。他方、アマチュアはその間、いかに「自分に振られることを回避するか」「自分に振られたとき、どうやって断るか」という自分の都合だけ考え続ける。
とか、要は、常にゴールオリエンテッドで考えることができる人はプロフェッショナルであると思う一方、「自分の利益」「プライド」「手続きの適切性」等、ゴール達成のための副次的な要素に過ぎないものにこだわってゴールに遠回りする人はアマチュアであると感じる。

ゴールに一直線、という肯定的な書き方をするとやや論点がぼやけるので、明確化を試みると、
  • ゴールへの最短距離でないものは、仮にそれがちょっと重要であっても、割り切って切り捨てる。アマチュアは、なんでもかんでも大事にして、メリハリを付けられず、結局すべて中途半端になる
  • 自分のつまらないプライドとか、手続き論とか、「てにをは」とか、そういうものを大事にはしても、優先はしない。アマチュアほど、そういった副次的なところに異様にこだわる。
といったあたりがゴールオリエンテッドと言うことかと思う。


スキルではなく、心持ち


まだまだ自分が若手であり、それゆえの青臭い議論かもしれないが、こうやって考えていくと、プロフェッショナルかどうかを規定する最重要要素は、スキルそのものではなく、その人の考え方(ゴールオリエンテッド、自前主義にこだわらない、etc)であると思う。

そこから敷衍すると、ローテンション人事でやっている日本企業においても、プロフェッショナリズムは十分持ちうるものであると思われる。スキルという意味では散逸してしまっていても、自分のプリンシプルを持ち、ゴールオリエンテッドで考えることができれば、それは筆者の定義ではプロフェッショナルなのである。

しかし、残念ながらローテーション人事の弊害なのか低い給料のせいなのか、どうも日本企業ではプロフェッショナリズムを持たないアマチュアが多過ぎる。顧客企業においても、自社においても。自分がアマチュアであることすら気づいていない人も多いように思われる。そういう意味で、自分は後輩を可能な限りたくさんプロフェッショナルの人たちに接触する機会を与えてやりたいと思っている。

Further Reading

グーグル人事戦略本・・・これを読むと、「昭和のアメリカ企業の人事戦略」と「平成のアメリカ企業人事戦略」が異なっていることがわかり、ステレオタイプから脱却できる。
他方で、おそらく「あ、これって日本だ」と安心してしまうのもおそらく違うのだろう・・・。