しかし、このハードルレートがIRR表記の場合、ちょっと「うげっ」と思ったりする。自分は最初、「もしかすると、ソルバーを使わないと計算できないかもしれないな...」とビビった。
でも、ソルバーなど使わなくても、ハードルレート達成額は計算できる。ここでは備忘までハードルレートがIRR表記の場合のハードルレート達成額の算出方法についてメモ。
投資が一回限りの場合
2013/1/1を基準日として、10年前の2003/1/1に100億円だけ投資した状況を考える。このとき、ハードルレートをIRRで8%とすれば、2013/1/1にハードルレートを達成するためには、IRRの定義上
-100 + X / (1.08)^10 = 0
が成り立つ必要がある。これをXについて解くと、
X = 100 * (1.08)^10 = 216
が得られる。すなわち、2003年に100億円投資した場合、ハードルレートをクリアするためにはリターンが216億円になっている必要がある。
途中で配当等収入があった場合
引き続き上記の例で考える。2013年基準の場合、2003年に投資した100億円は2013年に216億円になっている必要がある。さて、途中の2008/1/1に、10億円だけ配当があったとする。このとき、2013年にハードルレートを達成するために必要な収入はあといくらになるだろうか?
a) 前に引き続き、216億円
b) 216億円から10億円引いて、206億円
c) 216億円から、「2008年における10億円の、2013年における将来価値」15億円を引いた201億円
正解はc)である。初期投資額(負のキャッシュフロー)が符号をひっくり返した上でハードルレートにて複利運用されるのと同様に、途中収入は符号をひっくり返してマイナスとしたうえでハードルレートで運用される。すなわち、「2013年時点においてハードルレートをクリアするために必要な所要額」を減らす方向に作用するのだ。
結論
初期投資やら配当収入やらがある投資プロジェクトあるいはファンド投資において、ある将来の時期Tにおいてハードルレートをクリアしているためには、時点Tでいくらの収入が必要だろうか?その解は、上記のごとく、
(1)発生キャッシュフローを全て正負ひっくり返して、
(2)発生日から時点Tまでの期間で複利運用し、
(3) その合計を計算する
ことで算出される。
「IRRが8%になるようなCF(T)」とか考えちゃうと、「ソルバーの出番かな...」とか「自動化するにはマクロが必要かな..」とか思ってしまうのだが、上記の通りハードルレートクリア金額は単に複利運用して合計するだけであり、IRRとかいうもっともらしい概念に惑わされてはいけない。