2017-09-21

家購入にあたっての判断基準

この夏に近所に家を買ってしまった。

以下、自分の備忘のため、そこで行った検討や判断について備忘メモを残しておきたい。

もともとは、あと5年10年くらいしたら買おうと思っていて、少しずつ頭の整理を進めていたところだったが、実際には

・近所に魅力的な物件を見つけ、翌週の内覧を予約(手付前週の土曜日)
→もともと有していた「判断のフレームワーク」により1週間インテンシブに検討(手付前週の日曜~金曜日)
→内覧時に、事前検討で立てていた心配リストを仲介業者にぶつけ、Red Flag(即座に検討中止すべき要素)がないことを確認(手付前日:土曜日)
→資金計画の最終確認と家族会議を経て、手付(日曜日)

といった流れで、急な買い物ではあったがそれなりに準備して納得感のある判断をすることができた。

主なポイントを以下記載してみたい。


ゴール(家に求めるもの、求めないもの)の明確化

これまでの各種経験から、何か大きな判断をするにあたっては、自分が求めるもの(ゴール、効用関数)をしっかり考えることが重要であると考えていた。これを少し言い換えると

  • 目先の情動を大事にはするが、引きずられないようにする
    (パッションとロジックを両立させるためにも、事前にロジックは固めておく)
      
  • 完璧な選択などできっこない(何かしら、矛盾・制約・トレードオフは避けられない)という予想のもと、求めないもの・比較的劣後で構わないものまで決める
    (求めるものだけ決めるのでは不十分)
ということ。それに基づき、以下の通り、求めることと、加えて、劣後にしてもかまわない要素を整理した。

  1. 東京に住みたい・・・実家が千葉県で、就職後は(転勤・留学等を経て)東京暮らしだったので、「東京か、千葉か」というゆるやかな判断軸があった。

    結局、渋谷新宿等繁華街へのアクセスの良さとか、その辺を散歩しているだけで面白いものにめぐりあえる刺激(あるいは、そもそも散歩できるような環境)から、ある程度経済性や広さを犠牲にしてでも都内を選好したいと判断。
    すなわち、千葉埼玉に大きな家というオプションは劣後というところまで判断。
      
  2. オフィスに近くなくてもいいが、交通の便は良い場所がいい・・・これまで実家からの通勤や、留学時の徒歩通学など色々なパターンを経験して体得した自分なりの感覚として、

    ①徒歩時間と、駅で電車を待つ時間は気になる(長く感じる)→各駅しか停車しない駅や、駅から徒歩10分以上の場所は劣後。

    ②電車に揺られる時間は気にならない→たとえば文京区や港区等、勤務先(丸の内大手町界隈)に数駅で通勤できなくてもいい。
      
  3. 部屋の広さはこだわらないが、内装外装はある程度こだわりたい・・・端的に言うと、十把一唐揚げ的なコモディティ感が強い住宅は回避できるものなら回避したいと思っていた。
以上により、以下の通り、こだわるもの/妥協してもよいものを整理して、そういった判断基準と予算を兼ね合わせることで考えていくのだろうと何となく思っていた。

(こだわるもの)
  • 都内であること
  • 駅から家までの徒歩時間が短いこと
  • 快速・急行等が止まる等、電車の便が良い駅であること
  • 外装内装が陳腐でないこと
(妥協してもよいもの)
  • 職場からそこまで近い駅でなくてもよい
  • 駅近の結果、多少騒々しくてもよい
  • 広くなくても良い

そしたら、そういった条件を満たすような家が近所を散歩していたら見つかってしまったので、勢いで買ってしまった。判断基準との対比でいうと以下のような感じ。


(こだわるもの)
  • 都内であること   →  Yes
  • 駅から家までの徒歩時間が短いこと   →Yes. 駅のすぐ近く
  • 快速・急行等が止まる等、電車の便が良い駅であること   →Yes
  • 外装内装が陳腐でないこと   →Yes.  この界隈は「豪邸が相続等で売りに出たら、それを2-3分割した画一的な家が売りに出る」ということが典型的。自分のところも大きな土地を2分割して同一メーカーが同時に建てたという意味では同じなのだが、一工夫してくれていて、同時に建った隣の家と自分が買った家のデザインがかなり異なっていて、そこに強く惹かれてしまった。
(妥協してもよいもの)
  • 職場からそこまで近い駅でなくてもよい   →Yes.そこまで近くない(覚悟の上)
  • 駅近の結果、多少騒々しくてもよい   →Yes.駅前なので、線路の音等が多少うるさいが、窓や壁のつくりがそこまで安くないおかげで、そこまで気にならないことが確認できた
  • 狭くても良い   →Yes.床面積100チョイチョイと、戸建としては決して広くはないが、リビングダイニングが一体でなんとなく広くみえないこともないのでまあいいかと思えた
と言う感じで、

①こだわるポイントがきちんと満たされており、「いいじゃん」と積極的に魅力を感じられたこと

②欠点もあるが、(a)ここは妥協しても良いともともと覚悟していた欠点の範囲に収まっているか、(b) 一段細かく見てみると、欠点が解消・緩和されている(隣家とデザインが異なっていることや、リビングダイニングの一体性)から、それぞれの欠点に「まあいいや」と思えたこと

と、それぞれある程度の納得感をもって判断することができた。


教訓としては、結局仕事と似ているんだけど、

①ある程度判断基準を事前に準備しておくと、判断が円滑になる

家選びなんかも、賃貸vs持家、場所、その他たくさんのファクターがあり、その上で「結局は個別個別の出会いもの」みたいなところがあるので、とてもじゃないが完璧な判断をするのは難しいと思う。

だが、だからこそ、判断の「幹」として判断基準をある程度用意しておき、実際の物件が出てきてから初めて考えるというよりは、その物件をもともと用意していた判断基準に照らすとどうかという切り口で見ることにより、ある程度判断を円滑にすることができると思う。

ただ、この事前に用意する判断基準は、あくまで幹あるいは叩き台であり、これに教条的にこだわりすぎると現実に対応できなくなるので注意が必要だろう。幹をもたないと木は高く伸びないが、幹が固すぎると風で折れてしまう。


②とにかくベンチマークせよ

「よし、買おう」という判断の基盤にある重要ファクターの一つには、「他物件をSUUMO等でたくさん見比べたが、負けていないと得心できたこと」にあると思っている。

同じ予算帯で、同じ地域で、千葉に移るとどうなるか等色々な軸で100件くらいの物件を見比べてみたが、その結果として自分の買った物件が、少なくとも「負けていない」とは思えたことが購入を後押しした。

なお、気付きとしては「不動産市場は、言うほど丁寧なプライシングがされていないなぁ」というもので、
  • 駅から遠くなっても、ほとんど値段は変わらない
  • 快速停車駅の家も、その隣の駅の家も、結局エリアが一緒なら殆ど値段が変わらない

どうやら値段(少なくとも定価)を決めるファクターはもっぱら「なんとなくのエリア」「広さ」であるようで、駅からの徒歩時間とか、内装の作りの良さとか、同一エリア内での駅などはあまり価格に影響しない様子。

これを言い換えると

  • 快速停車駅は割安・・・快速停車駅も、その隣の各駅しか止まらない駅も、同じような広さの家の値段が変わらないなら、電車通勤する自分にとって、快速停車駅にある家の値段は割安と言える
  • 駅近物件は割安・・・同様に、駅に近い物件も割安と言える。ただし、騒音や治安等は逆に駅近物件の短所なので、実査により許容できるかどうかはきちんと確認する必要がある

③一段細かく見ることで、許容できるかどうか、見え方が変わるものもある

たとえば自分の例で言えば、駅に近いことで懸念される騒音や、デザインの陳腐性や、部屋の狭さ等。

大括りにしか見ないと「短所がある、よってNG」となってしまいがちなところ、実査等を通じて丁寧に見てあげると、「短所が短所になっていない」だったり「短所がカバーされており、我慢できる」等の発見をできることがある。

なお、一段細かく見ようと思うと、やはり事前に判断基準を持っておくことが大事になるものと思われる。当初仮説がないと、「仮説の修正」もできないので。