2017-09-22

住宅ローンのエクセルモデリング

住宅購入にあたりほぼ確実に直面するのが住宅ローン。

住宅ローンはそれこそ星の数ほどブログや書籍が出ており、およそ殆どの論点について対立する意見が同じくらい分布している。なのでここでも正解は何かと考えるというよりは、
「自分にとっての最適解に到達するための、フレームワーク(正解ではなく、考え方)」
「自分はこう考えて、こうやった」

という話を記載してみたい。



借入金額

頭金をどうするか・いくらまで借りるか等の判断にあたっては、Appendixで述べるようなExcelでのモデルを眺めながら、以下のファクターを考慮しつつ判断した。
  1. これだけの低利でお金を借りることができるのは、住宅を担保に出すことで信用力が増す住宅ローン以外ではありえない。借りて置いて適宜期限前返済することは機動的にできるが、その逆はできないので、借りられるだけ借りるのがよい
      
  2. 他方、借入額を増やすと、月間支払額が増えて、ある水準を超えると月の収支のバランスが悪くなってしまう(いくら「ボーナスも含めて考えるべき」と言いつつも、心理的に、毎月数万円の赤字というのは胃が痛くなる)
なお、言い換えると、「頭金は2割」みたいな話はあまり考慮する必要がないと判断した。
途中で売却することを高い蓋然性で考えているなら、そのときにキャピタルロスが出ても困らないよう頭金を厚めに積んでおく方がいいが、長期保有を念頭に置いているのであれば価値変動にさらされることはないのであまり気にしなくてもいいのではないかと思っている。

結論として自分は、いわゆるフルレバで、住宅価格と同じだけローンを借りておいた。
もちろん各種諸経費があるので実質的に初期負担はあるのだが、逆にいうと当初の負担は諸経費分だけで済むので、月間支払額に無理がないならそれでいいのではないかと判断した。


年限・金利タイプ

変動金利にするのか固定金利にするのかという議論があるが、自分は最長の35年固定金利にした。

もう少し金利が高ければ変動も検討したと思うのだが、今の金利環境では35年固定でも十分リーズナブルな水準になるので、そうであれば「金利の変動に一喜一憂する精神的苦痛」を取ることを避けたいと判断し、変動金利対比で多少高くなっても固定金利を選択した。

年限については、35年を素直に考えると「おいおい、自分が定年後もローンを払うのか」となってしまう。しかし、月間収支で賄える余裕をもった資金計画であれば、ボーナスの一部を任意に繰上返済(あるいは、繰上返済したつもりで、資金運用)に回すことができるため、ある程度繰上返済を前提にすれば35年という長期借入はリアルオプションとなり「返したいときは返済するが、そうでないときは引っ張っておく」とすることで自分の資金計画にフレキシビリティを与える効果がある。

目先の金利負担は、リアルオプションの手数料だと思えば、むしろ安いと思う。

銀行


銀行については、当初はネットで調べてとあるネット系の金融機関経由(●ルヒ)でフラット35を申し込むことを検討していたが、不動産仲介業者と相談した結果、仲介業者が提携するメガバンクに切り替えた。

その理由は以下の2つ:

  1. 経済性がネット系に遜色ない、というか勝っていた・・・

    ・事務手数料(数万円)をサービスしてもらえたこと
    ・金利に含まれている団信まで計算に含めると、フラット35より経済性が高いこと
    (フラット35では団信は任意であり、申し込む場合は金利の外数で加算される)
    ・繰上返済手数料もインターネット経由であれば無料であること

    などから、オールインの経済性がネット銀行経由フラット35に負けていなかった。

    具体的には以下のような感じで、オールインコストはだいたい同じだった:

    ネット銀行経由フラット35・・・X%
       +機構団信(0.358%)
       -長期優良住宅の場合当初数年得られる優遇
       +事務手数料(70万円くらい)
       ※保証料は不要(事務手数料に含まれているのかな)
     
    メガバンク・・・Y%(X%よりほんの少し高い)
       +固定金利手数料(1万円くらい)
       +保証料(後述)
       ※事務手数料なし、団信コストは込み
      
  2. 手間が圧倒的に軽減できる・・・

    仲介業者とメガバンクが提携しているので、審査にあたり求められる書類の殆どを仲介業者(またはその裏でハウスメーカー)が準備してくれて、自分は源泉徴収票と印鑑証明と住民票をメールで提出しただけで、ほとんど時間を割くことなく済んでしまった

    ●ルヒでは、設計図等住宅に関する書類を色々求められていて、正直「まいったな・・」というところがあったので、これは非常に助かった。

    結論として、コストが同じで手間が圧倒的に違うなら、そりゃメガバンクを選ぶよねということで、某メガバンクに決めた。

    なお、その後の手続も、ネット系であればほとんど窓口相談することなくやりきらなければならない(または、窓口相談すると事務手数料が大きく増える)一方で、メガバンクはコストゼロで手取り足取り窓口で教えてくれたので、住宅ローン手続のような「複雑な事務のかたまり」のようなプロセスにおいては、経済性のみならず事務負担もけっこう大事だなぁと事後的に気付いた。

    ※ただ、ネット銀行であればオンライン振り込みで決済できるのかもしれないが、メガバンクの場合、そのオフィスに仲介業者やハウスメーカー等が集結し、その場(銀行窓口)で振込をせねばならず、振込手数料だけで2000円くらいかかってしまったのがなんとなく悔しい。オンライン振込なら無料なのに・・・。

保証料


フラット35以外では求められる保証料。正直なところ、銀行と保証会社の間の話であり「なんだか、俺には関係ない話なのになぁ」と思わずにはいられないが、保証料を含めたオールインコストを考えてもなおメガバンクの方が得だったので自分はメガバンクを選んだ。

次に考えるべき論点として、保証料を一括で最初に払うのか、あるいは金利に上乗せして今後将来にわたって払うのかという論点がある。

これについては、自分は銀行(というか、手取り足取り教えてくれた仲介業者)に聞いて、一括の場合の保証料と、金利の上乗せ分を両方聞いて、それをモデルに落とし込むことでどちらの方がオールインコストが大きいか比較してみた。

金利については割と定型的で0.2%の上乗せとなるようだ。

これに対して、当初一括の場合の金額を聞いてみたが、当初にその金額を支払ってその後0.2%を節約する方が、足元の資金負担を減らす一方で将来にわたり0.2%余分に払うよりもかなり得であることがわかったので、自分は当初一括で支払った。

なお、自分の場合は(おそらく一般的にも、)一括保証料の分だけ多く借りてでも保証料を当初一括で支払った方が得だった。仮の数字で例示すると、

(A)当初保証料100万円、借入額7100万円(7,000万円+保証料100万円)、金利1.5%、35年ローンの総負担
  =35×PMT(1.5%, 35年, -7100) +100 = 9,278万円

(B)借入額7,000万円、当初保証料ゼロ、金利1.7%(1.5%+0.2%)、35年ローンの総負担

  =35×PMT(1.7%, 35年、-7000)=9,345万円

と、保証料の分だけ多く借りた(A)の方が総負担額は少なくなる。それだけ「0.2%ずつあとで支払うこと」のコストが大きいということだ。保証料の分だけ多く借りてでもなお当初一括で払う方が得ということは、要するに、「0.2%の上乗せの形で後払いすることは、常に損である」ということであろう。

Appendix:住宅ローンのExcelにおけるモデリング


自分は金融機関勤務なので多少例外的かもしれないが、住宅ローン検討にあたってはやはりエクセルで収支計画を作成できた方が望ましいと思う。

具体的には、PMT関数という癖のある関数を使いこなせるかどうかが鍵になると思う。


借入金額5,000
金利1.50%
年限35
年間支払額185
: PMT(金利、年限、-借入金額)
当初費用xxx
Year 0Year 1Year 2Year 3Year 35備考
期首残高5,0004,8904,779182: 前年度期末残高
支払額185185185185: 年間支払額を絶対参照でリンク
うち利払7573723: 期首残高×金利
うち元本返済110111113182: 支払額-利払
期末残高50004,8904,7794,6660: 期首残高-元本返済
総支払額(元利)xxx
総支払額(金利)xxx

この計算により、以下のデータを計算して、購入の判断に用いることができる。

①総支払額 vs 総収入予想額・・・
自分の収入の生涯にわたる予想「住宅ローン支払前損益」の総額と住宅ローンの利払いを含めた総額を比較することで、「この金額の家に、この金額のローンであれば、老後なんとか生きていけるかな」という判断をすることができる。

自分もこの計算をして、定年よりある程度前の段階で住宅ローンの返済ができそうであるという心証を得られるような範囲の家を選んだ。

②月間支払額 vs 月間キャッシュフロー・・・
おおざっぱに言えば上記モデルの支払額を12で割れば月間支払額になる(正確な月間支払額を計算しようと思うと、PMT関数において、金利を12で割って、支払回数を35年×12回とする必要がある)。そこで計算される月間支払額と、月収から必要経費を引いた金額を比べることで、「住宅ローンの元利支払後で、自分の月間の収支は帳尻があっているか」「仮に帳尻が合わない場合、ボーナスで吸収できる範囲か」等を検討することができる。

自分もこの計算をして、ボーナスに手をつけずに月収から諸経費を引いた残りで住宅ローンが払えるような範囲で家を選んだり住宅ローンの借入金額を考えた。

③諸経費込みの実効金利・・・
銀行間で比較していると、金利は低いが手数料を取る銀行があったり、金利は高いが手数料無料という銀行があったりして、直観的にはどちらの銀行が得なのかわかりづらいことがある。

そういうときには上記のモデルを使えば、両者を「生涯総支払額」で比較することができるようになるので両者の比較を一目瞭然にできることになる。


Further Reading:
熊野エクセル本(Link)・・・この手のモデリングをする際に基礎的に知っておきたい知識が豊富。