2013-03-24

"Yes but..." 論法

アメリカで体得したことのなかで、「これ本当有益だなぁ」と思えるもののひとつに「Yes, but論法」がある。


Yes,but論法とは、どんなことを言われても、決して「いや、それは...」とか「しかし...」といった反論や否定で返事を始めず、必ず何らかの肯定的なコメントで返事を始めるというもの。

「なるほど、それはいいアイディアですね。他方、こういう考え方もあると思いますが、どうですか?」とか
「あー、そういう考え方があったか、良いですね。ちなみに自分はこんな風に考えていました」とか
「了解しました、早速作業します。ところで、念のため確認ですが、XXXという論点があるかと思いますが、それはどうしましょうか?」とか。

自分が考える限り、この論法のメリットは2つ。

相手に「わかってもらえた」という安心感を与える

会話するとき、普通人は相手に自分の発言を理解してほしいという欲求にかられている。いくら「是々非々で」とか「自分の意見を言えない奴は駄目だ」とか言っている人でも、余程のトレーニングを積んでいる人でない限りは、自分の意見が認められないと結構なストレスを抱く。

相手の発言に対して反論・否定で始めてしまうと、相手は本能レベルであなたのコメントに対して反感を抱く可能性が高い。そうなると、どれほどその後に続くあなたのコメントが合理的であっても、あなたの言葉はもう相手には届かない。「いや、でも....」という言葉を聞いた瞬間に、相手はストレスを感じ、あなたに本能的に反発心を抱き、その後のあなたのコメントを効く耳を持たなくなってしまう。

他方、まず最初に肯定的な言葉で始めれば、相手はあなたの発言に好感を抱き、その後ちょっとくらい厳しいことを言われても聞こうという態度を崩さない。

単にコメントの前にちょっと肯定的な文句を入れるだけで、あなたの会話が相手に「届く」可能性は劇的に改善する。それゆえ、Yes, but論法は有効である。


早とちり防止

人は本当にしょうもない生き物で、会話の最初の一言で好感をもったり嫌悪感をもったりする。それと同様に、人はすぐに早とちりしてしまう。

自分の経験則では、人は50%くらいの確率で相手の発言に対して早とちりする。なので、ちゃんと確認することなく瞬間的に返事してしまうと、その返事が的外れとなる可能性は半分にものぼる。話し手にも当然問題があり、主語を省略したりしてミスリーディングな発言をするので、全体として会話は全然前に進まない。

そんなミスコミュニケーションを防止する一つの解決策がYes, but論法。「とにかく、相手の話を聞き、まずは肯定的な発言を返す」という態度でいると、相手の話をより注意深く聞けるようになる。また、返事の最初に「なるほど、こういうことですね」と言うことで、相手の真意を摩擦なく確認することもできる。


そういった側面があり、アメリカに限らず、日本でも、結構わざとらしいレベルで「Yes, but」論法を実践するのが良いと思っている。


Further Reading:

「話す技術聞く技術」・・・これを読んでおくのとおかないのでは、交渉が難しくなったときの対応力がまるで変ってくるだろう。
「交渉学のススメ」・・・交渉に関するイロハを日本の書籍のなかでは最も網羅的・教科書的に整理できている本だと思う