2013-10-25

弱者の交渉戦略

自分が弱い立ち位置にいるときでも、交渉の頑張り次第ではある程度は「マシな」成果を得られる、という話。

立場が弱い...

たとえばコンサルタント会社。競合がひしめいており、どこも財産といえば人なので、得てして顧客企業から入札をしかけられたり買いたたかれたり。

たとえば不況期における転職者。やっと決まった転職先の人事部からびっくりするくらい低い初任給をオファーされたが、なかなか他の転職先もないので「じゃあ他社に行きます」とも言えない。

どちらも、それっぽく言うと、BATNAが低いとか、相手と比較して自分にオプションがない(少ない)とか言えるんだと思うが、とにかく立場が弱い。そのおかげで、交渉しようにも、ずいぶんと不利なところから交渉が始まってしまい、そこから更に交渉で押しまくられて状況が悪化したり。

なので、「立場が悪いなら交渉から逃げろ」みたいな話もよくあるし、自分も立場が悪ければまずは極力逃げることを考える。でも、やっぱり社会は厳しくて(?)、弱い立場ながらも交渉をやりぬかないといけないときがどうしても出てくる。


弱い立場で交渉しなくてはいけないとき:まずは気持ちを切り替えて、立場以外の要素があることを思い出す


立場が弱くて、しかも交渉から逃げられないとき。まずやるべきことは、「ああ、立場が悪い」というネガティブモードから気持ちを切り替えて、「この立場からベストを尽くすには、何ができるか」という戦闘モードに気持ちを切り替えたい(Reframing:問題の再認識)。

次に、立場だけが交渉のすべてではないということを思い出す。自分の整理では、
交渉力=立場×事前準備×本番でのパフォーマンス
と整理できる。すなわち、事前準備と本番での頑張り次第で、立場の割に良い結果を出すこともできるというグッドニュースを思い出すと良いと思う(自分のモチベーションのためにも)。

まず気持ちをリフレ―ミングして、すみやかに事前準備に入り、本番でやるべきことをやる。そうすれば、立場が悪かったにしては、存外良い結果が得られる可能性が高まる。


弱者の交渉 主なポイント


  • 弱さを隠す:まず、自分が実際のところどの程度不利な立場にいるのか、あるいはそもそも自分が弱い立場にいること自体を、相手に知られないようにする。そうすると、相手がこちらを多かれ少なかれ過大評価してくれて、実際の立場の割には交渉が順調になる。
  • 自分の弱さばかり見ず、相手の弱さを探す:立場が悪いと、得てして、「どうしよう、自分、不利だなぁ...」と、自分の弱さばかり気になってしまうが、交渉力の決定要因はあなたの絶対的な弱さではなく、相手との関係における相対的な弱さである。得てして、相手は相手で、「地上司からサインオフもらってしまった以上、こいつとの交渉はブレークさせるわけにはいかない」等、それなりに弱みを抱えていることが多い。自分の弱さを直視するのが終わったら、早々に気持ちを切り替えて、相手の立場を丁寧に分析することで「なーんだ、相手も案外弱みがあるから、自分の立場は思ったほど悪くないぞ」というComfortを得られる可能性がある。
  • 「戦う」以外に、「弱さを認めた上で、懇願する」というオプションを持つ:立場が弱いと、場合によっては、戦って叩き潰されるくらいなら、「もう負けを認めるので、どうか泣きの一声、ちょっとだけ恩情をお願いします」といった感じでお願いした方が良い結果を得られる可能性がある。戦って敵意を招いて0点になるくらいなら、お願いモードに切り替えて2,3点稼ぎにいくのも一案。
  • 他の論点を組み合わせる/付加価値を作る:論点がたとえばコスト一点だけだったりすると、ひたすら競合と比較されて、原価ギリギリまで叩かれてしまう。こういうときは、可能な限りほかの付加価値を組み合わせて、コスト競争化を回避することが求められる。
  • 複数のオファーを同時に提示する:「ちょっとキツめ」の提案と「落としどころ本命」の提案を二つまとめて持参する。そして「ちょっとキツめ」から入ることで、落としどころで妥結する可能性を少しでも高める。Start with high-ball戦略の応用かしら。
  • 弱者同士で連帯する:弱者同士での競争を強いられるようなときは、思い切って隣の弱者に連絡し、共闘を申し入れる。お互い消耗戦するよりも、この方がマシな結果を得られることが多いし、中長期的な立ち位置を高めることにもつながる。
  • 開き直る:あなたは弱いかもしれないが、さすがに死んだり倒産したりすると相手が困るときがある。そういうときは開き直り、「これ以上攻めると、自分は死んでしまうぞ」という限界作戦も有効


Never give up, enjoy the bad times

いくつか弱者のための交渉戦略案を書いたが、結局のところ一番大事なのは、「立場が悪い=負け確定」と意気消沈しすぎずに、立場が悪いなりに最善を尽くそうと闘志を燃やせるか否かではないかと思う。

自分はここ最近めぐり合わせが悪いのか、スタート時点から入れてくれれば良いものを、戦況が悪化して不利な立場になってから交渉に組み込まれる事例が多かった。なので、最初は「ああ、立場が悪い、アカン」といちいち意気消沈していたが、次第に「毎回こんな感じの不利ゲームなので、いちいち嘆いていても仕事にならん。この条件下で少しでもポイント取ってやる」という感じのマインドセットに変わってきていて、最近では逆境になると一人だけ「来た来たー!」と言った感じでテンションが上がってしまい、テンションが下がる周囲とのギャップに苦しんだり。。

立場が弱くても上記のような工夫をすればそれなりに結果は出るし、立場が悪いので周囲も「あら、頑張ったね」と必要以上に好意的に評価してくれるし、実は立場が悪い状況ってオイシイのではないかと思ったりも。。。


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