2018-11-17

バブルに関する乱暴な仮説

ここ最近、仕事で従事する業界のあちこちから「いまってバブル」だよねという声が聞こえる。他方で、その声に甘える形で投資を抑制するのは楽なのだが、果たしてそれで寝転がっていても稼げないというジレンマにも直面しており、どのような判断がバランスの取れた判断なのか、非常に悩ましい。

そんな中で、手に取った「中央銀行」が、業界や環境は全く異なるものの、たまたまバブルについて実に深い考察をしてくれていたので、頭の整理として、本書のフレームワークを拝借しつつ、

・いまってバブルなの?
・リスクをどの程度見ておけばいいか?

と言うあたりについて書きなぐっておきたい。

いまはバブルなのか


  • 以下のアセットにおいて、資産価値の高騰は起こっている
    • 不動産(都心タワマンやアパートローンが典型)
    • ベンチャー(VC以外のプレーヤー、大型機関投資家の大量参入→バリュエーションの大幅弛緩)
    • M&A(アウトバウンドM&Aの件数増大、レバレッジドローンの拡張、EBITDAマルチプル等で示される価格高騰)
    • ついこないだまでは、仮想通貨
        
  • また、時代の「空気」として、背伸びへのプレッシャーが強まっているという肌感覚は強い
      
  • 他方で、期待の積極化(資産価値または物価、あるいは経済見通しに対する楽観)は、あまり強くない印象
      
  • また、バブルを金融システムの観点で「資産価値高騰や、期待積極化に裏付けられた借入(裏返すと与信)の積極化」も、アパートローンという局地戦では観察されるが、それ以外ではあまり起こっていないように見える
    • M&Aに伴うレバレッジドローンも、拡張はしているが、そこまで弛緩しているか?と言われると疑問。ノンリコースローンは、経済条件の弛緩は顕著だが、融資姿勢(そもそも貸すかどうか/EBITDAの何倍まで貸すか)は弛緩していない
    • ベンチャー投資は、おおむね、自己資金(余資)で行われており、借入とは切り離されている
        
⇒以上により、バブルを
(A)リーマンショックや日本の90年代バブルのような金融不安を伴うバブル
(B)資産価値下落に起因する単なる調整局面(アメリカのITバブルもここに分類されると理解)
(C)そもそも資産価値の膨張も起こっていない
と分類すると、現状は(B)なのではないか、すなわち、(C)とまでは言えないものの(A)ではないのではないか、という印象。

言い換えると、最近はベンチャーバブルとよく言われるが、過剰債務が伴っていない点において、過去のバブルと同視まではしないでもいいのではないかと予想する。


リスクをどの程度見ておけばいいか?


  • (A)のような局面であれば、個別企業がコケているという状況を超え、金融システム全体の不安が生じるので、金融機関への公的資金投入等の社会レベルの施策が行われるまでは経済の改善は見込みがたいが、
      
  • 現状が(B)だとすれば、単に「ベンチャー投資に背伸びしすぎた個別企業が、ちょっと反省する」ということに過ぎず、
    • 「自分としては背伸びしない、あるいは、背伸びするにしても自己資金の範囲にとどめる」
    • 「背伸びしている人には投資しない」

      という基本原則を貫徹しておけば問題ないように思う
        
  • いくつかの危ういセクターには近づかないのが望ましい
      
  • (A)ほどに悲観しすぎないという観点からは、「いまを懸念しすぎるあまり、自己資金での背伸びも行わない」というのは、やや縮こまりすぎの印象