2019-01-11

サブスクリプション

サブスクリプション――「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル(リンク)

出張移動中の飛行機で読んだ本が面白かったので、備忘までメモ。

自分は本書を読むまで、サブスクリプションビジネスを「単なる分割払い」と区別できていなかった。

実際には、支払方法が変わることに伴い色々と変わるところがあり、以下のようなあたりはポイントであろう。

以下では、本書の紹介をしつつ、サブスクリプションモデルは単なる分割払いと何が違うのか?という観点から書き散らかしてみたい。


なるほどなぁ、と思った点

以下のような点を理解しておくと、サブスクリプションビジネスと単なる分割払いの区別がしやすい。

  • 顧客第一主義が思想のベース・・・
    顧客満足の最大化、あるいは顧客に与える苦痛の最小化をしようと思うと、売り切り型より、日々サービス内容をアップデートできるXaaSの方が顧客にとってベターであるという発想がベースにあるという点は、なるほどなぁと
      
  • 単なるリースや分割払いとは別・・・
    サービスを日々進化させる点において、XaaSは従来の分割払いとは異なる
      
  • 解約のやりづらさ等により「かすめ取る」ビジネスとは別、むしろ逆・・・
    昔のimodeの会員サイト等のイメージから、サブスクビジネスの実質的な本質はこのあたりかと思っていたが、このような不親切さはカスタマーサクセス主義の真逆であり、むしろ望ましくない
      
  • カスタマーサクセスとは、要はリピート率改善・・・
    チャリンチャリン型のサブスクリプションビジネスにおいてはチャーン(リピート率の対義語)がKPIゆえの発想。
    さらにはアップセル(上位契約を締結する)が次のゴールとして存在。
      
  • リピートのおかげで、売上の相当割合が期首時点で計算できる・・・
    いわゆるチャリンチャリンビジネスのことで、この話自体は古典的な話。
    ポイントは、それが組織の座布団(リスクバッファ)になるということだ。
    継続収益が座布団として機能することで、会社は思い切った投資を行うことができる。「座布団があった方が遠くを見ることができる」という話は、直感的には理解できていた気がするが、明示的に理解・実践まではできていなかった気がする。
      
  • 売り切り型よりも収益計上タイミングが後ろ倒しになるので、当初のP/Lが弱くなる点についての覚悟が必要・・・
    これも、言われればわかるが、明示的に意識はできていなかったかも。
    少なくとも日本の組織でサブスク化に切り替えようと思うと、プロダクトとかプライシングというより、当面の減収減益を受け入れる経営判断力が最大のネックになるのかもしれない。

非ITビジネスへの応用可能性



これは本書で書かれていたというよりも、それを受けての自分の感想。

「IT系ではない自分の仕事に、いかにサブスク的発想を応用できるか」という観点で少し考察している。

  • Recurring Revenueがある事業についてはリピート率を意識する・・・
     
    チャリンチャリン、すなわちRecurring Businessについては、LTVが重要になるが、その場合、目先の収益よりも、リピートしてくれるかどうかをもう少し意識してもいいのかもしれない。
     
    単年度の収益率が低いビジネスが正当化されるのは、それが将来にわたり継続的に収益貢献するからなので。

    具体的には、「リピートの見込み」を営業上の判断軸に据えるとかだろうか。
      
  • 部下にチャレンジしてほしいなら、座布団を用意してあげることも一案・・・
     
    アントレ系の世界では、「背水の陣になることで必死になれる」というストーリーが選好されがち。
     
    それはそれで一端の真実をついているとは思うが、これはおそらく起業家という例外的な属性の人に当てはまる話なのではないかと思う。

    普通の人の集まりである普通の組織においては、むしろ、チャリンチャリンの安定収益源を用意してあげることこそがチャレンジにつながるのではないだろうか。

    「地主の息子は文学部に行く」みたいな話も同じ発想であろう。

    安定収益源がないと、普通の人の集まりだったら、むしろ彼らは安定収益源作りのために田畑の耕作を始めてしまい、むしろ狩猟に出かけなくなってしまうのではないか。

    大企業とかで、チャレンジを求めたいのであれば、経営者のやるべきことは「安定収益源を奪って背水の陣にする」というよりは
     
    「安定収益源を渡しつつ、その上でストレッチングな目標を課すことで、リラックスした状態でチャレンジを促す」ということではないだろうか。