2018-12-22

実行がすべて (Ideas are worthless, implementation is everything)

2018年も間もなく終わり。今年も仕事柄、社内外・自他・上司後輩問わず、様々なトラブルの現場に居合わせる機会に恵まれた。

そこでの関係者の苦労やそこからの巻き返しを見ることで色々な反省や学びがあったので、それら経験から「仕事がうまくいかないパターン」みたいなものを、少し整理してみたい。

いくつかある「トラブるパターン」の中から、今日は実行軽視症候群について少し考察してみたい。




計画重視、実行軽視

一見優秀そうな組織や個人が、なぜだかうまく結果を出せないということがある。経験談から言うと、企画は一生懸命行うが実行フェーズに情熱が続かない頭でっかちの組織や人は、「見た目が優秀そうな割に、結果が出せない」という罠に陥りがちであるように思っている。

シリコンバレー系の話でもよくある話として、アイディアに価値はなく、実行が全てだというコンセプトがある。思いついたアイディアを、きちんと形にするところで差がつくという趣旨だ。

これはシリコンバレーに限らず、その辺の日本企業でもかなりあてはまる気がしている。
社内外で様々なプロジェクトを目にしてきたが、多くのプロジェクトで以下のような症状を見ることが多かった。

症例(1)通すまでがゲーム、通したら燃え尽きてしまう


多くの組織で、ものごとを決めようと思うと機関決定せねばならないので、そのための議案(例:投資委員会メモ等)において、企画・構想はしっかりと練られ、議論される。

しかし、多くの人はその集中力の限界から、一部の人は故意に、機関決定を得られ次第情熱のピークが過ぎ去ってしまい、「投資後は現場が適宜やります」みたいに急に勢いが低下する。

あるいは、「委員会を通せれば何でもいい」という発想に傾斜するあまり、当初の企画構想に「どうやって最後までやりきるか」「施策を浸透させるための方策」といった実行フェーズに関する議論がそもそも欠けていることも。



症例(2)企画する人と実行する人の分離

企画するのは、経営企画部だったり、投資「前」チームだったりして、実行フェーズに移る段階で担当者が現場だったりモニタリングチームだったりに変わってしまう、ということが散見される。

そのようなとき、企画フェーズの人は実行フェーズの困難に思いを馳せることなく計画を作ってしまうし、実行フェーズの人は企画にこめられた思いやニュアンスをうまく理解することなく、実行フェーズでどうしてもおろそかになってしまう。

「企画は悪くない、悪いのは、企画を遂行できない現場だ」と、マリーアントワネットのようなことを言う経営者や経営企画部に見覚えはないだろうか?


症例(3) プロマネ嫌い

これは個人的には結構意外だったのだが、ガントチャートでもなんでもいいが、今後の工程表を作ることとか、作ったものを定期的に振り返るといったプロジェクトマネジメント的所作について、これを毛嫌いする人が少なくないように見受けられる。「やれない、知らない」ならわかるのだが、「やりたがらない」人が多いのは意外だったが、いずれにせよ、プロジェクトマネジメントがないなかでは、どうしても実行のクオリティは下がる。

自分の予想に過ぎないが、このような拒否反応を示す人の特徴として
①自分ひとりで仕事することに慣れており、複数人での働き方に不慣れ
②頭の中を可視化・言語化することに不慣れ
等があるのではないかと思っている。
そのようなプロマネ嫌いの人で、「プロマネは嫌いだが、実行フェーズにおいて、やることはしっかりやる」という人は見たことがない。

実行をちゃんとやるだけで勝てる世界は、まだ結構残っているのでは


以上の通り、実行フェーズが軽視される症例は色々あるし、きっと原因も色々あるのだと思う。

しかしいずれにせよ、そのような状況を見ていると、実行フェーズまできっちりとやりきるだけで、あっけないくらい結果を出せてしまうのではないかという楽観的仮説をもっている。

もし、多くの現場が、Idea is worthless, implementation is everythingというコンセプトを理解した上で、現場実行力を競い合っているようであれば、競争ポイントはまさに実行力となるので、他の人より高い実行力を組織レベルで発揮できないと生き残ることができないだろう。

他方で、自分の見たところ、世の中にはまだまだ、実行の重要性を見落とし、机の上や会議室で企画コンテストに明け暮れている現場が多いように見受けられる。

すなわち、そのような「企画コンテスト」的現場では、
①企画を練る
②実行フェーズが疎か
③反省段階で、「企画がダメだった」という反省の仕方になり、実行面について正しく反省できない
④その結果、改善案はもっぱら「企画の修正・改善」に傾斜し「実行の改善」には見向きもされない
⑤実行面はなんら改善していないので、いくら企画を修正してもほとんど事態は改善しない
となりがち。

つまり、企画コンテスト担ってしまっている人が多い中では、単に実行フェーズをやりきるだけで簡単に結果が出るのではないかというのが筆者の仮説。


まとめ

  • 筆者の見るところ、思ったより結果が出ないと悩む現場の多くでは、企画に比べて実行フェーズでの情熱・リソース・工夫等がおろそかになっていることが多い。
      
  • アイディアだけではダメで、実行までやりきって初めて価値が出るという発想がまず大事。見たところ、この発想を持てておらず、企画コンテストに明け暮れてしまう組織は少なくなく、そのような悩める現場は、単に実行フェーズまで思いを馳せるだけで簡単に結果が出ることが多い
      
  • その他求められる工夫としては、
    ①企画する段階で、実行フェーズの作りこみまで心血を注ぐ。機関決定を得るため、通すことに特化した実効性がない緩い企画を立てない

    ②企画する人が、できるだけ、実行フェーズにも関与する。あとはヨロシクねを許さない

    チーム/プロジェクト単位で仕事する最低限のリテラシー(プロマネ、チームワーク、思考可視化等)を身に着ける、あるいは社内で鍛える。このようなリテラシーを持たない結果、実質的に実行スキルが不足している人(個人レベルでのタスク消化しかできず、プロジェクトチームに入れない人)は実は少なくない

参考文献