2018-12-29

Do and Don't (for Manager) 2018年版

自分の観察や失敗経験をもとに蓄積した自己教訓集。
年末の棚卸的に、書き残してみたい。

マネージャーとしての観点とプレーヤーとしての観点があるが、本稿ではマネージャーとしての観点について。

プレーヤー版はこちら→リンク


ビジョナリーであれ

マネージャーとプレーヤーの違いは自らやるか他人を動かすか。

  他人を動かすとき、権威や暴力で強制的に命令してもアウトプットの質は上がらない。
①チームメンバーの価値観や関心
②組織の方向性や価値観
③今からチームで取り組む仕事
を理解し、これら3点が一体的に整合し、かつやる気を奮い立たせるようなビジョンが非常に大事。全社レベル、部門レベル、チームレベル、どのような単位でもそのようなビジョンは必要であり、これが作れるか否かでマネージャーのアウトプットは雲泥の差となる。

具体的には
(A) 上記3点を満たすようなビジョンを、気合で考え出すこと
(B) 考え出したビジョンを、察してもらうことに期待せず、きちんと言語化・可視化すること
(C) 一度可視化してオシマイにせず、手を変え品を変え、浸透のため繰り返し示すこと

の3点ができて初めて「ビジョナリーである」と言える。単にでっかいことを頭の中にぼんやりとイメージするだけなら誰だってできる。それを他人の心に届けてはじめてマネージャーとして仕事したことになる。


インクルーシブであれ

他人を動かすのだから、定義上、他人たる部下は多かれ少なかれ自分とは異なる考え方を有する。

考え方の違いを拒絶せず、受け入れた上で、その違いを所与としてチームのパフォーマンスの最大化を試みる。「自分とあなたは考え方が異なるようですが、それでも自分はあなたのやり方を尊重する」というダイバーシティに通じる考え方が重要。

不慣れなマネージャーは、違いそのものに苛立ってしまい、「俺の考えにシンクロしろ!」的な無茶をついつい言ってしまうが、それは避けたい。


コアバリューには徹底的にこだわる

上記の通りダイバーシティ、インクルージョンは大事。
 
ただし、これは「なんでも許容」「なんでもあり」は意味しない。むしろ、ダイバーシティを大事にするからこそ、コアの価値観は共有する必要がある。
 
コアバリューが共有されていないと、メンバー各位が思う存分自由に動くことができない。ビジョンと同じくらい、全社、部門、チームそれぞれのコアバリューを定義した上でメンバーに浸透させることが大事。ビジョンもコアバリューも、単なるお題目ではなく、きわめて実務的な話。
 
逆に、根っこの価値観をそろえようともせず、枝葉の行動スタイルを画一的に揃えようとするのは最低のマネジメントスタイル。


シンプルに語れ

上記の通り、マネージャーはビジョン及びコアバリューをチームメンバーに浸透させることがそのミッション。

まずはしっかりとしたビジョンやコアバリューを考え抜くことが大事だが、その次に大事なのは、それをチームの末端にまで理解させるデリバリー。

デリバリーにあたっては、複雑なコンセプトを極限まで絞り抜いて、シンプルかつ強力な言葉で語る必要がある。チームにおける腹心・右腕ではなく、チームにおける末端(一番の新人や専門性の低いスタッフ職)の顔を思い浮かべて発言内容を練るべき。

内容をシンプルに絞り上げるためには、
①十分な専門知識(難しいことを簡単に言うためにこそ、知識が重要)
②ニュアンスを捨てる勇気・決断力
③メンバーの理解(末端スタッフのリテラシーや関心に沿った発言内容にする)
が重要。


ビジョン、コアバリュー、Where we areの3点がクリアになっていれば人は動く

ビジョン(ゴール)とコアバリュー(スタート時点のお約束)に加えて、Where we are(現在位置)の3点がわかれば、メンバーは放っておいても望ましい方向に動いてくれる。
 
プロマネや進捗報告が大事なのは、メンバーをマイクロマネジメントするためではなく、むしろ、メンバーに憂いなく思う存分自由に走り回ってもらうため。
 
ふと気が付くと、チームメンバーがいつの間にか仕事を前に進めてくれている。そのような瞬間こそがマネージャーの醍醐味。
 

プロセスではなく結果を無邪気に要求するなかれ

結果に到達するための、内生変数たるプロセスKPIを考えることこそが、マネージャーの仕事。

株主は社長に「株価を上げてくれ」と期待するわけだが、社長が社員にパススルーで「株価を上げてくれ」というのであれば社長はいらないという話。

現場の複雑な構造を踏まえた上で、ターゲットを絞った上で「今はこのKPI改善を頑張ってくれ」等、結果の手前にある「結果改善をもたらす、一段手前のKPI」の特定こそがマネージャーの仕事。

なお、これはトップダウンという意味ではなく、部下が「正しいプロセスKPIを見つけ、それを上司に具申できるような雰囲気作り」でも構わないので、「上司は頭がいい必要がある」という趣旨ではない点は注意。


「それができない構造」に無自覚・未対処のまま、無邪気に結果を要求しない

ゴール達成にあたっての障害を取り除くことこそがマネージャーの仕事。

できていない状況を「部下がアホ」と現実逃避的に理解せず、「うまくいかない構造がある」と考えた上で、その構造要因の特定・解消を行って初めて仕事したことになる。

利益相反、トレードオフ、インセンティブ不整合など、構造的要因はそこかしこに存在する。


マネージャーが部下の仕事を奪うなかれ

部下にできない仕事(例:顧客のトップマネジメントとの交渉、他部門との調整、チームのビジョン策定等)をやらずに、部下にもできる仕事(日常の実務のほとんどはここにあてはまる)に逃げてはいけない。

  部下にもできる作業を率先して行い、部下が暇そうに見ているなか充実感を感じているようでは最低。


暇であれ

日常業務が忙しいのはわかる。しかし、仕事を部下に押し付けてでも、マネージャーは時間的余裕を持つ必要がある。マネージャーの本分は企画や判断であり、そういった知的作業は精神的・肉体的余裕がないと質が悪くなる