難しい問題を
・より広い視座から捉えなおすことで、対立構造を緩和する
・少し視座をずらすことで、理解を容易にする
等。
リーダーに求められるスキルは、よく課題発見力・課題設定力・課題解決力という感じに分類されることが多いが、オバマは課題の発見・設定には天才的に優れていたように感じる(解決力はよくわからないが)。
ここまで「視点をずらす」ということについて書いてきたが、それでは「視点をずらす」とはどのような意味だろうか。
本稿では、ピボット力あるいはリフレーミング力について考察してみたい。
課題を見つけるだけでは足りないし、気づいたことを口に出すだけでも足りない
現状のなかに漂う問題を敏感に察知する「課題発見力」は、リーダーに求められる能力の一つだ。
誰かに課題を示してもらわないと動けないリーダーなんて、ほとんど定義レベルでおかしいからだ。
自分の周りでも、優秀さを感じさせる人は往々にして、課題や論点を素早く察知する。
日々の問題意識の高さがその背景にあるものと考えられるが、そういった問題意識アンテナは、課題解決の経験を蓄積したり、質の良い外部との接点を多く持ったりすることにより形成されるように思われる。
ただ、ただ単にそこにある課題を察知してイライラするだけでは、リーダーシップがあるとは言いづらい。それだけだとただの神経質だ。
また、察知しても、それをただ「問題である」と叫ぶだけでは、周囲はあまりそれに賛同できないだろう。
リーダーには、単に課題を発見するだけではなく、それを適切な形に再定義する「課題再定義力」がセットで求められる。ここで言う「適切な」とは、
・Inspiring: メンバーが問題の重要性や意義を共感できるような角度から課題を定義すること
・Able to solve: メンバーが解決に意欲を燃やせる程度に、ほどよく難しく(難しすぎず、簡単すぎず)課題を定義すること
あたりがその要件になろうかと思う。
課題設定力 ≒ 自由な視座、視点のずらし力
このように、課題を単に発見するだけでなく、課題を「料理」して実務に耐える(=目標とするにふさわしい)
「解ける課題」
「解きたい課題」
にすることが、リーダーの資質の一つになると考えられる。
ここで求められる「察知した課題を料理するスキル」だが、自分の感覚としては、
「どれだけ視座をフレキシブルに保てるか」
「どれだけ多方面から物事を見ることができるか」
という点にかなり集約できるのではないかと感じている。
・一段手前から見る・・・「部署の問題」ではなく「全社の課題」と捉えなおす、「この案件固有の論点」ではなく「今後の案件に活用しうる面白い論点」と捉えなおす等。こうすることで、小さな対立点を脱論点化できたり、課題をより取り組み甲斐あるものに設定できる。
・一段上・下から見る・・・大事な案件が剥落したようなときに「なあに、取って食われるよりはマシだよ」といった感じで下から照らしなおすことでメンバーの士気を保ったり、成功に喜ぶチームに「他社はもっと先を言っているぞ」と慢心を戒めたり。
・相手の立場から見る・・・「お客様は年末までに解決を期待している」と相手からの立場で課題を言い換えることで、課題に規律感や緊張感をもたせる。
このように、手前、上下、第三者等、さまざまな視座から課題を再照射することにより、課題がより適切な形で定義され、メンバーがそれに取り組みやすくなることが多い。
これはリフレーミングと呼ばれる手法である。
要は、見つけた課題をしっかりとリフレーミングして初めて課題は「解ける課題」になるということ。
リフレーミングにあたっては、以下のような要素を踏まえる必要がある。
①チーム各位の問題意識
②チーム各位の実力
③外部環境
④競合状況
⑤顧客ニーズ
そういったものを考慮してリフレーミングすることなく単に思いつくまま課題を口に出しても、それは外部環境分析なき戦略のようなもので、独りよがりで、関係者に受け入れられるまでに時間がかかる。
気を付けるとよいポイント
- 課題を発見して満足していないか?・・・課題はリフレーミング等の手法により適切に定義されて初めて意味があるものになる。
そういった「料理」がなされないまま、生の状態で課題をチームに放り投げても、その課題はチームになかなか浸透しないだろう。
- なんでもかんでもリフレーミングすればいいと思っていないか?・・・大事なのは違う視座から見ることそれ自体ではなく、最適な視座から課題を捉えなおすこと。
変に料理するくらいなら、素直に思ったことを言う方が最適なこともありうる。
大事なのはリフレーミングを選択肢に含めることであり、必ずリフレーミングすることではない。
- 使う場所を間違えていないか?・・・人をほめたりするようなときに、中途半端にリフレーミングを使うのはリスキー。
例えば「隣の山田さんはこんなこともできない。その点、あなたはできるので、素晴らしいですね」みたいな言い方をされても、言われた方はあまり嬉しくない。
人をほめるときは、他人をけなすことによって褒めるのではなく、その人の功績・長所等を素直にほめる方がストレート。