2012-08-04

プレゼン

MBAでみっちり学んだものの一つでためになったものの一つがプレゼン。

・メッセージはシンプルに
・プレゼンの構造を明確に
・掴み、概要頭出し、総括、気のきいた締め等

しかし、帰国してから今日までにいくつか金融系のプロフェッショナルのプレゼンテーションを聞く機会に恵まれた結果、多少、というか結構、「ま、やっぱ、MBAで学んだものをそのまま使うのはムズいよね」という感覚をもっている。

MBAで学ぶプレゼンは、今思うと多かれ少なかれ、「自分の話に興味を持たない人をどう引き込むか」という飛び込み営業的・ベンチャーキャピタルへのピッチ的な文脈で設計されていたと思う。そのため、重要となるのがインパクトや完結性、繰り返し等によって内容を相手に「刷り込む」こととなる。

日本でも当然そういったシチュエーションは多い。ざっくり、プレゼンテーションの8割はそういった「もともと無関心だった人に、あの手この手で興味を持たせるための初期的プレゼン」なんじゃないかと思うが、そういった初期的プレゼンでは上記のような手法がそのままバッチリ役に立つ。

でも、なんちゅうか、ビジネスのより濃いエリアで行われるプレゼンは、ちょっと状況が異なるんだと思う。聞き手は既にプレゼンターの提供する商品(サービス)に対して強い関心を持っており、粗方理解までできている。だが、例えば購入候補としてA・B・Cと複数商品があって決めきれていなかったり、細かいところで不安なところがあったりして、粗方理解しているにもかかわらず購買に結びついていないという「もうちょい」という状況。

売り手もそれを承知している。そのため、自然と、フォーカスは「関心を惹くこと」等の初期的なものから「100%納得してもらうよう説明を尽くすこと」というよりヤヤコシイところに遷移する。

その結果、プレゼンは、なんともまあメンドクサイ高度なものに姿を変える。

・当日の配布資料は、「1ページ1図表」みたいなインパクト重視のpptというより、説明を尽くした文書や、詳細な比較表になっていく

・起承転結は崩壊し、開始早々質疑応答の嵐となる。質問する方も、なまじ愚かな質問をしてしまった日には売り手になめられるので、よく練った鋭い質問をどんどんぶつける。なにしろその商品に基本的に関心があるので、質問にも自然と力が入るのだ。

・「ここから先はトム、次はジョン・・・」みたいな無意味な役割分担も崩壊する。戦略レベルの高次な話題はMD、実務レベルのマニアックな話はアソシエイトあるいはVPといった感じで、プレゼンもチームの総力戦となり全員気が抜けなくなる。質疑の応酬のなかで、全員が瞬時に「この話題について最適なのは俺」と判断し、そのプライドをかけて丁寧かつわかりやすい説明を試みる。



って感じ。なんというか、

・「シンプルにインパクト重視で」みたいなMBA的プレゼンも大事は大事だが、それが有効なのは主に初期的営業やビジネスプランのピッチのとき。顧客の関心を0から1にするためのもの。

・でも、世の中のプレゼンの全てが0を1にするためのものであるはずがなく、9を10にするためのプレゼンも重要であり、それは全然世界が異なる。
※もちろん、パーツパーツで役立つ発想や技はある

・BtoB等で顧客をConvinceさせるため、相手の関心を9から10にするためには、詳細な情報、細かいところまで手の届く説明、ボスから作業員までチームでの総力戦、プレゼン前後の丁寧なケアなどが不可欠であり、そこで「0を1にするプレゼン」をしちゃうとしょぼいことこの上ない。

・ということで、なんというか、「時と場合による」って話なんだと思う