投資(特に経営権取得を伴うような買収)をするときにどうしてもつきまとうのが
「成長をどこまで考慮するか」「バリューアップをどのくらい計算に含めるか」という問題。
投資するとき、誰だって馬鹿ではないので、企業を高値掴みはしたくない。
もし許されるなら、できるだけ保守的な予想を行い、その予想に基づきシビアなバリュエーションを行いたいに決まっている。実績だけ織り込んだ現状横這いの予想を作り、それに基づく低価格で買収できるなら、そんな楽なことはない。
しかし、投資の現実には競争入札者がいたり、売手が価格にうるさかったりするので、
保守的に見積もった安い値段では、買収できないのが現実だ。
すなわち、
現実に買収を行おうと思ったら、多かれ少なかれ、不確実なバリューアップを予想に織り込んだ「高いバリュエーション」で臨まざるを得ないのだ。
できもしないバリューアップを予想に織り込んで高値掴みするのが愚かなのは疑いない。他方で保守的な値付けをして入札負けするのも、少なくとも買収を仕事とする場合には、やはり愚かであるから話が難しい。
(統計風にいうと、第一種の誤りを避けるばかりに第二種の誤りをしてしまうのは望ましくないということ。保守的一辺倒のスタイルを好む人は、投資する側をあきらめて、ファイナンス側の仕事に就くべきだろう)
以上のような
「バリューアップを織り込むのは難しいが、かといって、織り込まないとそもそもゲームにならない」というジレンマのなかでどうバランスを取るのがいいのか、経験則のようなものを少し書き散らしてみたい。