2013-11-24

名刺のデータベース化

スキャナーを使って、名刺のデータベースを作れば便利、という話。


スキャン狂い

自分は留学に行く直前、3年ほど前にScansnapを買ったのだが、それ以来すっかりスキャン狂いになってしまった。留学先でもらう山のような書類ももらった先からスキャン→廃棄していたし、ノートもスキャンするようになってからは大学ノートではなく一枚一枚取り外しが容易なレポート用紙に切り替え、ノートを取った先からスキャンしていた。

※ただし、留学からの帰国時に外付けHDDが壊れて、そういったファイルのうちバックアップし忘れていた一部が消失してしまったので、スキャン偏重のリスクも痛感させられたのだが...

そういう習慣がついてしまったので、ふたたび働くようになった今でも、人一倍スキャンを活用している。人からもらった書類もすぐさまスキャンしてすぐ捨てちゃうし、名刺もどんどんスキャンしている。紙として保存しているのは、Ongoingの案件の資料くらいで、それでさえ携帯している必要がない書類はどんどんスキャン→廃棄している。


スキャンは駄目だよ、だって...

そういうスキャン大好き人間なので、とりわけ、名刺を物理的に保存・管理している人を見るとものすごくもぞもぞ・背中が痒くなってしまう。

  • 机の棚のかなりの部分に過去十数年蓄積した名刺を溜めている人
  • 名刺がたまると、「銀行系」「友人系」とかジャンル別に名刺を物理的に再整理している人
等を見ると、どうも苦笑いしてしまう。

おそらくそういった人々も、名刺をスキャンして管理するという手法があること自体は認識していると思う。ただ、自分もかつてはそうだったが、名刺のスキャン管理ではいくつか入口に精神的ハードルがあって、「いやー、だってスキャンすると●●じゃん?だから敬遠しちゃうんだよねー」という会話が繰り返される。


1. スキャナーってスキャンにすごく時間がかかるではないか:

ういーん、がしっ、がしっ、がしっ。ギーコ、ギーコ、ギーコ。そんな感じで、一つの名刺をスキャンするのに3分くらい時間がかかるのではないか?そういった懸念を持つ人は、もう少ないとは思うが、まだまだ存在する。



2. 専用の管理ソフトを使う必要があるのではないか:

いろいろある名刺管理ソフトの一つを購入・インストールしないと、名刺のスキャン管理ができないのではないか、という発想。

また、得てしてそういった名刺管理ソフトは、自宅のPCにはインストールできても会社のPCには入れられないので、ビジネス上の使い勝手が悪いという判断を惹起しうる。

さらに言えば、そういった名刺管理ソフト用のデータは、専用の拡張子で保存されるので、他のPCでは開くこともままならないという懸念も想定される。


3. 文字認識(OCR)に時間がかかるのではないか

名刺をスキャンしたら、氏名とか電話番号とかを文字認識機能(OCR)を使って読み取っていたら、名刺一枚当たり1,2分かかってしまい、とてもじゃないが忙しい自分としてはその時間は勿体ない、という発想。

以下では、そういった懸念を払拭するような名刺管理のやり方について一例を挙げてみたい。


スキャナーによる名刺管理:基本

1. スキャナを用意

まず、スキャナを用意する。市販のスキャナを買うか、会社のプリンタにスキャン機能がついていると有難い。

何だかんだいって、ここが最大のハードルにはなってしまう。スキャナで有名どころはScansnapだが、Amazonでぱっと検索してもやっぱり4万~5万円と高い。

2. スキャンして、単にPDF化するだけにする

ここがある意味ポイント。特定の名刺管理ソフトも使わないし、そういった管理ソフトのための特別なファイル形式にもしない。ただ単に、PDFにするだけ。

これにより、他のPCでも閲覧できる互換性が確保されるし、名刺管理ソフトを買う必要がなくなる

3. ファイル名に各種データを入力してしまう


最終的に、スキャンした名刺PDFをひとつのフォルダにまとめて保存して、エクスプローラの検索機能にてデータを検索できるようにしたい。

なので、本来なら名刺管理ソフトにピコピコ入力したりOCRで読み取らせたりしていた主要な情報を、すべて名刺PDFのファイル名に入れてしまう。社名、氏名、出会った日、出会った案件名等々。

スキャナーによる名刺管理:応用

4. Evernoteの活用

上に挙げた1.~3.を実行することで、PCにおいて名刺をデータベースとして管理することができるが、さらに、Evernoteを活用することにより、そのデータのクラウド化が可能になる。

ひとつひとつのPDFファイルをこまめにEvernoteにアップしてもいいし、Scansnapの機能で「スキャンと同時に読み取ったファイルをEvernoteに送る」というものがあるのでそれを使っても良い。

いずれにせよ、スキャンした名刺PDFをEvernoteにアップロードすることで名刺データのクラウド化ができて、例えばiPhoneでさっとデータにアクセスできるようになり、「出先で、半年前に会った●●証券の杉本さんの電話番号ってなんだっけ?」みたいな問題に直面してもパッとデータを見ることができる。

5. PDF名刺データ印刷時のTips

そういった名刺PDFは、通常表と裏両方をスキャンするのだが、ふつうに印刷してしまうと表で1ページ裏で1ページと、なんだか非効率なハードコピーが出てきてしまう。

なので、PDF名刺データを印刷するときは、印刷設定において、「複数ページをまとめて印刷」「まとめて印刷するページ数:2」という設定で印刷すると、ひとつの頁に名刺の表裏両方が印刷できる。


でも、まあ、最後は価値観しだい

と、ここまでスキャナーを活用した名刺管理の簡単なやり方について述べてきたが、自分は「名刺はスキャンすればよく、物理的に貯めこむのはナンセンス」とは思っていない。

まず、スキャナは高い。スキャナに対する数万円の投資は、大いに判断が分かれるところだと思う。また、仮に職場にスキャナがあったとしても、仕事時間中にずっとスキャンしてたら、まるで働いていないような雰囲気になってしまうという懸念もあるかもしれない。

また、ビジネス上の考え方として、名刺に精神的な意味合いみたいなものを持つ人がいて、名刺を捨てるなどとんでもないという考え方もあると思う。たしかに自分も、そんなに声を大にして「名刺はどんどん捨ててます」とは言うのを憚られている。

また、データ化・インデックス化するよりも、「渡辺さんの名刺は、えーっと、机の何段目の奥の方にある、赤い名刺ケースの真ん中くらいだったかな?」というより手触り感のある覚え方を好む人もいるだろう。

なので、ここで書いているスキャンによる管理は、百人いれば百人ある名刺管理方法のひとつを披露したに過ぎず、他の手法をけなすものではないことは最後に付記しておきたい。

ついついこういうTipsを身につければつけるほど、「俺のやり方すげー、すなわち、他のみんなはショボイ」と言う感じで自己尊大になったり他人を馬鹿にしたりしてしまうので、そういったことは回避せねばならない。そういった罠に陥るくらいなら、トラディショナルなやり方で名刺管理した方がマシとさえ思うので、自分としても注意したい。

2013-11-02

プロフェッショナル

「ぼくのかんがえるプロフェッショナリズムについて」という話。

プロの皆さん


留学から帰って以来、部署の職務内容のおかげだったり留学友達の関係だったりで、いわゆるプロフェッショナル(弁護士、会計士、コンサルタント、投資銀行のバンカー、PE)と仕事で関係する頻度が増えた。その結果、書くとなんとなく恥ずかしいのだが、プロフェッショナリズムというものについてかなり意識させられている。

以下には、プロらしさの構成要素として考えられるものについていくつか述べてみる。

スキル

ひとつわかりやすいものとして、スキルの高さが挙げられるだろう。M&A関連の契約に精通した弁護士、買収時の税務イシューに詳しい税理士、モデリングのスキルetc.やはり、そういったスキルを持つ人はプロであると感じる。

だが、スキルだけではプロフェッショナルという概念を説明しきれない気がしている。例えば、

  • スキルがあまり高くないアソシエイト級の弁護士やバンカーを見ても、それはそれでプロフェッショナリズムを感じるのはなぜか?
  • メガバンクの人とか、仮に特定の部署に長年所属していて当該分野に詳しかったとしても、プロと思えないのはなぜか?
など、スキルだけを変数としてもプロフェッショナルを説明しきれないように感じている。そういうことを感じるようになってからは、プロフェッショナルを構成するものとして、スキル以外に何があるか考えていて、例えば以下のようなものが挙げられるのではないかと思っている。

ルールを持っている

たとえばゴルゴ。依頼は複数抱えないとか色々な「My Rules」を持っており、かなり頑固にそのルールを厳守するし、相手にもそれを強いる。

思うに、そういった頑固さやルール一つ一つの是非自体がプロフェッショナルの本質とは思えない。単に頑固な人とか、それはむしろ柔軟性がないという意味でプロフェッショナルではないと思うし。

他方、「自分のルール=流儀をもち、それをApplyする」という方法論にはプロフェッショナリズムを感じる。なんというか、その場でスクラッチから「どうやってやるか」というところから検討されてしまうと、依頼する側としては非常に不安になってしまう。自分の考え方ややり方の引き出しをもっていて、カスタムメードが求められる現場においても、ゼロから考えるのではなく、既存の引き出しや流儀を適宜組み合わせつつ当てはめるような方法論を持つ人に対しては、自分はプロフェッショナリズムを感じる。

「そういうときは、定石としてはXXXという手法を使います」
「定石としてはXXXですが、状況の特殊性を踏まえ、やや応用になりますがYYYでやりたいと思います」といった感じで、当該分野におけるベース/引き出し/ルールを持っている人はプロ的であると思われる。

自前主義でない


アマチュアによくあるのは、何でもかんでも自分でやろうとして、結果として最善の結果に到達できていない人。

プロフェッショナルは、結果から逆算して、「誰にどう頼んだら、いちばんベストの結果になるか」という発想でやっている人が多い。「人に頼むことでプライドが云々」とか、「まずはできる限り自分でやってみて、どうしてもできないところだけ他人に頼む」とか言う発想は、新人研修的には有用な発想かもしれないが、プロフェッショナルとして高い報酬を貰うのであればそれは邪魔な発想だと思う。

ゴールに一直線

目的をきちんと見定めていて、常にそこへの最短距離を目指すような人には、プロフェッショナリズムを感じる。

換言すると、まず、目的が明確化されていない人はアマチュアを感じる。PJの遂行なのか、関係者のコンセンサス取得におけるソフトランディングなのか、自分のプライドの充足なのか、なんでもいいけど、そういった目的候補のなかのいずれを究極的な目標にするのかあいまいな人は、結果として行動もフラフラしており、アマチュアであると感じられる。

あるいは、目標と定めたこと以外に拘泥する人もアマチュアである。例えば
  • 相手との交渉の前に、どうしても一回事前ミーティングしておく必要があるが、交渉の日程が決まったのが前夜。当日の朝に事前ミーティングをする必要がある。そういうとき、プロは、無理やりにでもあるいは前夜の深夜にでも、電話か何かできちんとミーティングを行う。他方、アマチュアは、「日程調整が遅い」とか「俺は聞いていなかった」とか四の五の言って、結局ミーティングが開催されず、中途半端な交渉をして負ける。
  • PJのメンバーにアサインされた人。プロは、ゴールから逆算して必要になるタスクを速やかに洗い出し、それぞれのタスクを最適な担当者に振り分けることを考える。他方、アマチュアはその間、いかに「自分に振られることを回避するか」「自分に振られたとき、どうやって断るか」という自分の都合だけ考え続ける。
とか、要は、常にゴールオリエンテッドで考えることができる人はプロフェッショナルであると思う一方、「自分の利益」「プライド」「手続きの適切性」等、ゴール達成のための副次的な要素に過ぎないものにこだわってゴールに遠回りする人はアマチュアであると感じる。

ゴールに一直線、という肯定的な書き方をするとやや論点がぼやけるので、明確化を試みると、
  • ゴールへの最短距離でないものは、仮にそれがちょっと重要であっても、割り切って切り捨てる。アマチュアは、なんでもかんでも大事にして、メリハリを付けられず、結局すべて中途半端になる
  • 自分のつまらないプライドとか、手続き論とか、「てにをは」とか、そういうものを大事にはしても、優先はしない。アマチュアほど、そういった副次的なところに異様にこだわる。
といったあたりがゴールオリエンテッドと言うことかと思う。


スキルではなく、心持ち


まだまだ自分が若手であり、それゆえの青臭い議論かもしれないが、こうやって考えていくと、プロフェッショナルかどうかを規定する最重要要素は、スキルそのものではなく、その人の考え方(ゴールオリエンテッド、自前主義にこだわらない、etc)であると思う。

そこから敷衍すると、ローテンション人事でやっている日本企業においても、プロフェッショナリズムは十分持ちうるものであると思われる。スキルという意味では散逸してしまっていても、自分のプリンシプルを持ち、ゴールオリエンテッドで考えることができれば、それは筆者の定義ではプロフェッショナルなのである。

しかし、残念ながらローテーション人事の弊害なのか低い給料のせいなのか、どうも日本企業ではプロフェッショナリズムを持たないアマチュアが多過ぎる。顧客企業においても、自社においても。自分がアマチュアであることすら気づいていない人も多いように思われる。そういう意味で、自分は後輩を可能な限りたくさんプロフェッショナルの人たちに接触する機会を与えてやりたいと思っている。

Further Reading

グーグル人事戦略本・・・これを読むと、「昭和のアメリカ企業の人事戦略」と「平成のアメリカ企業人事戦略」が異なっていることがわかり、ステレオタイプから脱却できる。
他方で、おそらく「あ、これって日本だ」と安心してしまうのもおそらく違うのだろう・・・。

2013-10-30

リフレ―ミングのすすめ

ストレスに対し、悪口を言ったり相手に正面から文句を言うのもいいけれど、場合によってはちょっとした工夫でストレス解放できるかも、という話。


世の中辛いことだらけだが、正面突破はムズカシイ

仕事なんてしていると、毎日毎日いろいろなことがあり、ストレスにさいなまれたりする。やれ上司が使えない、やれ他の部署から仕事をたらい回しにされる、やれ部下が刃向ってくる、やれ印刷したら紙詰まりetc...

そういうとき、どうやってそのストレスを解消すればいいだろうか。上司に正面切って反論する?彼女や妻に愚痴を言う?ツイッターに悪口を垂れ流す?同期集めて悪口大会?どれも、それはそれで楽しいし筆者もついついやってしまうのだが、得てしてイライラしているときに悪口を言うと、それが巡り巡って相手の耳に届いてしまったり、あるいはストレス解消どころか悪口を言った負い目でますますイライラが募ったり。あるいは、文句を言われた上司がストレスを抱いて、翌日以降反撃に出たり...

とかくこの世は難しく、イライラを外に向けて解消させようとすると色々な形で弊害が生じる。

イライラを外に吐き出す代わりに、リフレ―ミングを試してみる

イライラを、上司本人にぶつけてみたり、友人や彼女に愚痴ってみたりするのもいいが、ここではリフレ―ミングという思考遊びを提起してみたい。

リフレ―ミングとは、自分の視座を意図的に現状の視座からずらしてみて、異なる視点から自分の状況を見つめ直してみるという試み。たとえば、

(例)上司が無能で、本来上司がやるべき仕事が自分に押し付けられてくる。イライラ
 
上記の例は、上司が頼りにならないという状況をもとにしており、そこから来るネガティブインパクトを「仕事が自分に押し付けられる」と捉え、結果としてイライラしている。

ここでリフレ―ミングを試みる。

上司が頼りにならないという状況には変わりがないが、そこでネガティブなインパクトを見ようとしている自分を客観視した上で、「では、ポジティブな面を探してみるとどうだろうか?」と思考実験してみる。すると、

・上司が頼りない結果、自分は本来出世しないとできないような責任度の高い仕事をできている
・上司が頼りない結果、自分が外部の有力者と直接コミュニケートできてしまっている
・上司が頼りない結果、自分が交渉をリードすることができていて、交渉スキルの向上が図れている

など、同じ「上司が頼りない」という出発点からでも、いろいろな明るい示唆を見出すことができる。そうすると、「本来上司がやるべき仕事が押し付けられているけど、本来は出世しないとできないようなチャレンジングな仕事ができてるから、まんざらでもないな」というように、現状を肯定的に捉えることができるようになる。そうするとイライラも多少解消して、結果としてその「押し付けられた仕事」の生産性が一層上がって高いパフォーマンスが出て、ほめられて、上司が立場を失ってザマミロ...という好循環モードに入ることができたりする。

リフレ―ミングの長所は、自分一人で解決することができる点にある。上の例では、上司と直接戦うこともなく、妻に愚痴を言って嫌われることもなく、壁にパンチして手を痛めることもない。自分の考え方をちょっと試しにいじってみるだけで、簡単にすっきりすることができる。

また、他人を変えることは難しいが、自分の考え方は自分の頑張り次第で簡単に変えることができるので、その点でも「変化度合/それに費やしたエネルギー」比でみても、その効果は抜群である。

リフレ―ミングの切り口いろいろ

上の通り、リフレ―ミングは便利であるので、色々な視座をもっておくと切り替えがしやすい。


  • ネガ/ポジ:物事のポジティブな面に光をあててみるとどうか
  • わたし/あなた:相手の立場になってみてみるとどうか
  • 自分/他人:第三者の立場で考えてみるとどうか
  • Takeaway:イライラする事象のなかから、無理やり教訓を取り出そうとするとどうなるか
  • 笑い:イライラする事象のなかから、無理やりオモシロポイントを取り出すとどうなるか
等。この手の切り口をもっておくと、イライラするようなことがあってもすぐにリフレ―ミングして、「まあ、でも、ちょっと見方を変えるとこれも笑えるよなぁ~」といった感じでむしろ面白くなり交感神経がONになったりする。

リフレ―ミングの罠

そんなリフレ―ミングも完璧ではなく、むしろやり過ぎることによる弊害もあると考えられる。

改善意欲の減退

リフレ―ミングに慣れてしまうと、ちょっといやなことがあってもリフレ―ミングによりすっきりしてしまい、事態を改善したいという意欲が薄れてしまう。その結果、本来は相手に言うべきことを言ったりすることできちんと事態改善を図るべきであったところ、何も改善せずに流してしまい、引き続き同じ問題が起きてしまったりする。

成長の停滞

多くの場合、イライラは、次のステップに進むにあたり必然的に発生する摩擦のようなものである。これまで作業的な仕事が多かったアソシエイトがディレクターになったことでソーシングの割合が増え、仕事がうまくいかずイライラしたりとか。

そういったとき、イライラはPDCAサイクルの一環のようなもので、本来そのイライラは仕事にぶつけることで改善が必要な場合が多い。しかし、そこで反省したり改善したりせずにリフレ―ミングしてすっきりしてしまうと、改善し損ねてしまう。これは非常に損である。実際、いかにもリフレ―ミングとか下手そうな不器用そうな人が、もがき苦しむけど、結果的に誰よりも成長するなんてことは周囲でも散見される。

「あくまで短期的な改善案だが、便利なツール」くらいに捉えて、その長所と短所を踏まえた上で活用すると、リフレ―ミングはもっともその効果を発揮するのではないかと思われる。




2013-10-28

Negotiauction

入札したあとに交渉がある、あるいは入札の後に交渉するようなときの話。


Negotiauction(交渉入札)

Negotiauction(交渉入札)というコンセプトは、ハーバードのSubramanianらが提唱した概念で、最終的な決定にあたっては交渉が伴うという前提のもと入札を行うという考え方。

入札一発勝負で、入札後には何の調整プロセスもないという状態であれば、入札者にとっての最適戦略は「できるだけ安く入札する」というものになる。それぞれの入札者の限界利益ラインがひとつの目安になるだろうし、場合によっては採算割れでの入札(winner's curse)もあるだろう。

しかし、もし入札だけでは全てが決まらないようなケースがままある。入札を開催する側の立場からすると、
  • 価格以外にも考慮すべき論点が複数存在する
  • 本来交渉で決めたいが、入札者が多過ぎて全員とは交渉していられない
などのとき、往々にして「一次選考は入札→二次は少数の候補者と交渉」とか「一次選考は入札→二次選考も入札→本命と補欠を決め、その後交渉で最終決定」とか、入札と交渉を組み合わせた選定手法がとられることがある。

入札開催者にとってのメリット

上にも書いた通りだが、まず入札をすることにより
  • あまたいる候補者の中から、相応のプライスを提示してくれる(本気度の高い)少数の入札者をスクリーニングできる
  • 言い換えると、本気度の低い候補者のことを、早期に、交渉もせずに排除できる
  • 結果として、少数あるいは単独にまで絞り込んだ候補者とじっくりと条件交渉できる
  • 入札ですべてを決めてしまうと、「プライスは低く抑えたが、他の条件がイマイチ」という候補者のことを排除できない一方、最後に交渉を挟むことでより最適な候補者を選定できる
といったメリットがある。いわば、入札と交渉の良いところどりといったところ。


入札者にとってのメリット

他方、Negotiauctionは入札者にとってもメリットがある。
  • 純粋な価格競争を回避できる。たとえば、「業界最安値は出せないが、高い品質を提供できる」ような事業者にとっては、単なる入札では太刀打ちできないが、交渉入札であればきっちり勝負ができる。
  • 入札戦略が緩いものに変わる:入札者にしてみれば、「交渉フェーズにまで行きさえすれば、あとはこちらのものであり、一次入札はとりあえず通過さえすればOK」という発想となり、「何が何でも一番札を取る」というところから比較すると目線はだいぶゆるくなる。
等。ありていに言うと、最後に勝てばよいわけで、最終ステップまでは「負けない程度に、ほどほどに競争力のある札を出す」くらいの発想になる。

入札開催者にとっての戦略

交渉するかどうか明らかにしない

入札のあとに交渉があるということが確定的事実として周知のものとなってしまうと、入札者は皆「よし、それでは、交渉に残るだけの『負けないためのほどほどの入札』をしよう」という発想に切り替わり、自分の出せる最安値を入札しようという意欲を失う。そうすると、全体的に入札額は高くなってしまい、入札開催者にとっては望ましくない状態となる(交渉のスタート地点が不利なところから始まってしまう)。

それを防止するために考えられるのは、入札のあとに交渉があるかどうかを明言しないというもの。もしかすると価格だけで決まってしまうかもしれないし、もしかすると交渉余地があるかもしれない...というくらいの状態にしておけば、入札者は真剣度合を増し、より積極的な価格設定をしてくるだろう。それで望まない入札者が残ってしまったとき(=価格は低いがクオリティも低い入札者ばかり残ってしまったとき)は、事後的に交渉の比率を上げることにより、高品質な入札者を取りこぼすことを回避することができる。

「場合によっては価格だけで決まる可能性も十分ある」というメッセージを打ち出すことで、入札者が第一回戦たる入札フェーズを「舐める」懸念が低下し、満足いくプライスを見ることができる可能性が高まる。


交渉相手を一人に絞り込まない


入札を1,2回実施し、交渉相手を選定するときに、交渉相手を1人に絞り込むと、これまでの「当方は1人、相手は複数、よってこちらの交渉力が強い」という状態が一変し、「こちらも1人、あちらも1人、それゆえ交渉力は似たりよったり、ガチンコ勝負」という状態になってしまう。

そうなると、こちらとしても、なんとしても開催した入札を成功させないと色々まずいことになるので、多かれ少なかれ譲歩をせざるを得なくなったりする。そうすると、入札だったにもかかわらず随分と弱気な条件で合意するハメになったりして、わざわざ入札した意味がなくなってしまったりする。

それゆえ、交渉力の維持という観点において、交渉相手は決して1人に絞り込んではいけない。明示的に2人と同時に交渉してもよいが、それも大変なので、本命候補1人を選ぶと同時に、補欠を1人選んでおくというのが実務上最適なのではないかと思われる。本命に対しては「少しでも我々の気にいらない条件を提示したら、すぐ補欠に切り替えるからな」と強いことを言うことができる。

えてして本命候補者と補欠候補者は同じ業界の人なので、もともと仲良しだったりして、容易に結託できたりするものだが、このように本命と補欠というように分断されると、見事に利害が分断されるので、結託リスクも低減される。


「本命候補者」と適切なコミュニケーションを取る

公的な入札ではこれをやると逮捕されてしまうが、民間の入札ではむしろ奨励されるべき戦略として、数多いる候補者のうち有力候補者とはきちんとコミュニケーションしておくという考え方がある。入札と交渉の割合や、重視するのは何かなど。そうすることで、優れた候補者が入札で落ちてしまったり、その後の交渉フェーズでの摩擦が低減できるようになる。
※ただし、やり過ぎるとその有力候補者に足元を見られ、交渉で苦しむことになるので注意


最後はバランス=アートの世界

入札と交渉という、背反に近い性質をもつ手法を組み合わせることで最適の結果を追及するNegotiauction。実務では当たり前のように行われている(M&Aのオークションはほぼ間違いなく入札と交渉の組み合わせで成る)が、その運用については主催者やそのアドバイザーの巧拙により大きく異なってくる。

入札で候補者を1社に絞り込んでしまってはいないか?
交渉があることがバレバレで、入札が形骸化してしまっていないか?
一次入札と二次入札の間で、どいつもこいつも態度を急変させていないか?
終わってみれば、一次入札の最悪値よりも悪い値段で妥結してしまっていないか?

こういった問題を解決するためには、入札と交渉のバランス、入札に対する情報開示ポリシー、関係者との表・裏でのコミュニケーション、重視する論点のウェイト検討など、パッと計算では答えを出せないような問題ひとつひとつについて検討を進めていく必要がある。バランスを取るということであり、結局はアートの世界。ここを舐めてかかると、似たようなオークションプロセスでも、ずいぶんと違った結果になってしまうだろう。

2013-10-25

弱者の交渉戦略

自分が弱い立ち位置にいるときでも、交渉の頑張り次第ではある程度は「マシな」成果を得られる、という話。

立場が弱い...

たとえばコンサルタント会社。競合がひしめいており、どこも財産といえば人なので、得てして顧客企業から入札をしかけられたり買いたたかれたり。

たとえば不況期における転職者。やっと決まった転職先の人事部からびっくりするくらい低い初任給をオファーされたが、なかなか他の転職先もないので「じゃあ他社に行きます」とも言えない。

どちらも、それっぽく言うと、BATNAが低いとか、相手と比較して自分にオプションがない(少ない)とか言えるんだと思うが、とにかく立場が弱い。そのおかげで、交渉しようにも、ずいぶんと不利なところから交渉が始まってしまい、そこから更に交渉で押しまくられて状況が悪化したり。

なので、「立場が悪いなら交渉から逃げろ」みたいな話もよくあるし、自分も立場が悪ければまずは極力逃げることを考える。でも、やっぱり社会は厳しくて(?)、弱い立場ながらも交渉をやりぬかないといけないときがどうしても出てくる。


弱い立場で交渉しなくてはいけないとき:まずは気持ちを切り替えて、立場以外の要素があることを思い出す


立場が弱くて、しかも交渉から逃げられないとき。まずやるべきことは、「ああ、立場が悪い」というネガティブモードから気持ちを切り替えて、「この立場からベストを尽くすには、何ができるか」という戦闘モードに気持ちを切り替えたい(Reframing:問題の再認識)。

次に、立場だけが交渉のすべてではないということを思い出す。自分の整理では、
交渉力=立場×事前準備×本番でのパフォーマンス
と整理できる。すなわち、事前準備と本番での頑張り次第で、立場の割に良い結果を出すこともできるというグッドニュースを思い出すと良いと思う(自分のモチベーションのためにも)。

まず気持ちをリフレ―ミングして、すみやかに事前準備に入り、本番でやるべきことをやる。そうすれば、立場が悪かったにしては、存外良い結果が得られる可能性が高まる。


弱者の交渉 主なポイント


  • 弱さを隠す:まず、自分が実際のところどの程度不利な立場にいるのか、あるいはそもそも自分が弱い立場にいること自体を、相手に知られないようにする。そうすると、相手がこちらを多かれ少なかれ過大評価してくれて、実際の立場の割には交渉が順調になる。
  • 自分の弱さばかり見ず、相手の弱さを探す:立場が悪いと、得てして、「どうしよう、自分、不利だなぁ...」と、自分の弱さばかり気になってしまうが、交渉力の決定要因はあなたの絶対的な弱さではなく、相手との関係における相対的な弱さである。得てして、相手は相手で、「地上司からサインオフもらってしまった以上、こいつとの交渉はブレークさせるわけにはいかない」等、それなりに弱みを抱えていることが多い。自分の弱さを直視するのが終わったら、早々に気持ちを切り替えて、相手の立場を丁寧に分析することで「なーんだ、相手も案外弱みがあるから、自分の立場は思ったほど悪くないぞ」というComfortを得られる可能性がある。
  • 「戦う」以外に、「弱さを認めた上で、懇願する」というオプションを持つ:立場が弱いと、場合によっては、戦って叩き潰されるくらいなら、「もう負けを認めるので、どうか泣きの一声、ちょっとだけ恩情をお願いします」といった感じでお願いした方が良い結果を得られる可能性がある。戦って敵意を招いて0点になるくらいなら、お願いモードに切り替えて2,3点稼ぎにいくのも一案。
  • 他の論点を組み合わせる/付加価値を作る:論点がたとえばコスト一点だけだったりすると、ひたすら競合と比較されて、原価ギリギリまで叩かれてしまう。こういうときは、可能な限りほかの付加価値を組み合わせて、コスト競争化を回避することが求められる。
  • 複数のオファーを同時に提示する:「ちょっとキツめ」の提案と「落としどころ本命」の提案を二つまとめて持参する。そして「ちょっとキツめ」から入ることで、落としどころで妥結する可能性を少しでも高める。Start with high-ball戦略の応用かしら。
  • 弱者同士で連帯する:弱者同士での競争を強いられるようなときは、思い切って隣の弱者に連絡し、共闘を申し入れる。お互い消耗戦するよりも、この方がマシな結果を得られることが多いし、中長期的な立ち位置を高めることにもつながる。
  • 開き直る:あなたは弱いかもしれないが、さすがに死んだり倒産したりすると相手が困るときがある。そういうときは開き直り、「これ以上攻めると、自分は死んでしまうぞ」という限界作戦も有効


Never give up, enjoy the bad times

いくつか弱者のための交渉戦略案を書いたが、結局のところ一番大事なのは、「立場が悪い=負け確定」と意気消沈しすぎずに、立場が悪いなりに最善を尽くそうと闘志を燃やせるか否かではないかと思う。

自分はここ最近めぐり合わせが悪いのか、スタート時点から入れてくれれば良いものを、戦況が悪化して不利な立場になってから交渉に組み込まれる事例が多かった。なので、最初は「ああ、立場が悪い、アカン」といちいち意気消沈していたが、次第に「毎回こんな感じの不利ゲームなので、いちいち嘆いていても仕事にならん。この条件下で少しでもポイント取ってやる」という感じのマインドセットに変わってきていて、最近では逆境になると一人だけ「来た来たー!」と言った感じでテンションが上がってしまい、テンションが下がる周囲とのギャップに苦しんだり。。

立場が弱くても上記のような工夫をすればそれなりに結果は出るし、立場が悪いので周囲も「あら、頑張ったね」と必要以上に好意的に評価してくれるし、実は立場が悪い状況ってオイシイのではないかと思ったりも。。。


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参考:「交渉の達人」    →Amazonへのリンク

2013-10-21

カラーリングには欠かせない、Colorbrewer

最近見つけたサイトで便利だと思ったこのページ。


ぱっと見ると地図があって、地図とか地理とかのサイトかな?と思うのだが、これは色の使い分けのサポートをしてくれるサイト。

左の設定画面でパレットを選ぶと、その利用例として右の地図に色分けが出るので、その地図を見ながら気に入ったカラーリングをするというもの。すべてのカラーパレットについて、RGBコードが出るので、Excelなどで簡単にカラーリングができる。

特に、同一系統色でのグラデーションが非常に便利。ここで選んだ色でグラデーションを作ると、カラーで印刷しても綺麗だし、さらに、グレースケール印刷してもきちんと色の階段ができる。実務に置いては「白黒で印刷しても見るに堪えるかどうか」というのがけっこう大事なので、このサイトを使いつつ色の階段を意識するだけでずいぶんアウトプットがすっきりする。

また、同一系統色のパターンのみならず、異なる色の使い分けについてもサポートしてくれる。赤と青と黄色などを使い分けたいとき、このサイトにある使い分けの例をまねるだけで、ずいぶんと素人臭さがないカラーリングをすることができる。

非常に便利なので、スライド作成やグラフ作成の際には常にこのページを出しながら作業している。

でも、個人的には、白+黒+もう一色だけという3色スライドこそがベストだとは思っていて自分で作るスライドは基本3色だけなので、あんまり色の階段も出番ないんだけどね。。。





2013-06-09

組織としての学習能力

最近、組織としての学習能力について考えを巡らせている。もっと具体的に言うと、

・我々はもっと部内の同僚の経験から学べるはずではないか。知識吸収ルートが、自分自身の経験か書籍か外部コンサル等かで、同僚からの学びというものが少なくないか

・かといって、社内イントラに何か経験に基づくメモのようなものがあがっていても、まあ自分自身読まないんだよな。コミュニケーションの問題なのだろうか

・自分自身の情報収集では限界に達し、なんとなく同僚に聞いてみたら「あ、それは経験あるから知ってるよ」という感じの「もっと早く聞いておけば」という経験。これは言い方によっては時間の無駄ということであるようにも思われるので、こういうことを極小化するためにはどうすればいいか

などといった問題について思案している。


2013-05-11

フリーキャッシュフロー計算のコツ

FCF計算についていくつか、これまで自分が受けた質問や、自分で気になった点をメモ

参考書籍は愛読のArzacバリュエーション本


2013-04-23

ハードルレート達成ポイント

ファンドLPAなどでよくある、「総資金拠出額に対するトータルリターンがIRRで●%を超えたら、GPに成功報酬を支払う」といった記述。いわゆるハードルレートだが、これが単利(総拠出額×●%)であればハードルレート達成地点の計算は簡単で、総拠出額とハードルレートを単純に掛け算すれば算出される。

しかし、このハードルレートがIRR表記の場合、ちょっと「うげっ」と思ったりする。自分は最初、「もしかすると、ソルバーを使わないと計算できないかもしれないな...」とビビった。

でも、ソルバーなど使わなくても、ハードルレート達成額は計算できる。ここでは備忘までハードルレートがIRR表記の場合のハードルレート達成額の算出方法についてメモ。


2013-04-07

「官僚的」が悪いとき、実は悪くないとき

帰国後、いろんな人や組織と対話/協議/交渉/喧嘩したなかで、「うーん、こいつは官僚的だなぁ」「こいつは官僚的でなくてやりやすい」等、「官僚的か否か」みたいな観点で相手を見ることが多かったので、自分なりに官僚らしさ(?)を整理してみる:

2013-03-24

"Yes but..." 論法

アメリカで体得したことのなかで、「これ本当有益だなぁ」と思えるもののひとつに「Yes, but論法」がある。

2013-03-07

リーダーシップと組織力

帰国以来投資の仕事をしているのだが、DDとか買収交渉とかバリュエーションとかタックスプランニングとか実は全然してなくて、今のところもっぱら投資先のガバナンスとかフォローアップとかばっかりやっている。そういう仕事を通じて、最近思っていることの一つに、「組織のサステナビリティ」というものがある。


2013-03-02

Friendly negotiation, Hostile negotiation

最近、交渉を"Friendly negotiation"と"Hostile negotiation"という区分で分けると、わりと腑に落ちるのではないかと思うようになってきたのでメモ。


2013-02-27

Google風折れ線グラフ


Google風(だと自分が思う)折れ線グラフ。要は折れ線グラフとX軸の間の領域が、折れ線の色をちょっと薄くした色で塗りつぶされているもの。感覚的な話だが、折れ線と軸の間を塗りつぶすだけで、なんとなく見やすくなる気がしていたので、今回試しに作ってみた。


2013-02-24

知的自由

ものすっごく大雑把な話になってしまうが、この世の中で残念なことといえば、自分の妄想世界の中で独りよがりに構築された歪んだレンズでものごとを見てしまうことだと思う。

ファクトベースの冷静な判断ができない。比較考量による分析ができない。そういうのはまあ正直仕方ないと思う。にんげんだもの。でも、問題なのは、自身がそんなレンズをもっていることに気付けない人。歪んだレンズを通して見た歪んだ価値観に基づき、他人とは到底共有できないようなトンデモロジックを展開する人。相手は良くても混乱するし、悪いとあなたを軽蔑するだろう。

自分はレンズをもつことそれ自体はまったく否定しない。この複雑な世の中、レンズなしに全てを虚心にうけとめて全てをゼロベースで考えていてはまったくスピード感が足りない。何らかのレンズをもち、そのレンズを使って仮説を立て、その仮説をぶつけて、それを検証する...という仮説的思考は渡世に不可欠なものだ。

自分が問題視するのは、レンズを使うことそれ自体ではなく、自分がレンズを使っていることに無自覚的な人だ。レンズを使っているにもかかわらずそれに無自覚的だと、①相手に対し無邪気に(無神経に)偏見に基づいた独りよがりの理論を展開して相手を困惑させる②自身のレンズが変なことになってないか検証することをしなくなるので、レンズのリファインができず、結果としてレンズがどんどん曇ってくる。

見たもの・聞いたもの・感じたものをベースに、直感に頼り、何らかの判断をすることは否定されるものではない。でも、そういった直感で出てくるものはあくまで仮説であり、それに無自覚的だと、結果的に予断をもった判断をしてしまうことになる。

自分のもつレンズを意識し、それが仮説に過ぎないことを意識し、必要に応じて修正を厭わない態度。そのような態度こそが知的自由であると思う。

経済的自由を獲得することもそれなりに大変だけど、知的自由を手に入れることは本当に難しい。でも、知的自由は、自分が一生かけても模索する価値がある、尊いものだと思う。だって、自分がレンズ使ってることに気付いている人なんて本当に一握りだもの。。

2013-02-23

ガイカワサキ的論法

自分の留学先の卒業式ゲストスピーカーとして来たGuy Kawasaki。

自分は彼のシンプルで整ったブログやスピーチが割合好きで、自分の卒業式で彼のスピーチを聞けたことにけっこう満足している。

彼は難しいものごとをシンプルに切り取ることを得意としており、たとえば卒業式では倫理について「自分がやりたくないようなことを、人に強いるな。倫理については、それだけ頭に入れておけばいいから」と言ってのけた。

自分はこの言葉が好きで、卒業以来、自分のモットーの一つとしてこの言葉を拝借している。やりたくないことは、人に頼まない。それを意識するだけで、結構自分に素直に生きられるものだ。

彼の言葉を「考えるヒント」として、あくまできっかけとして使うことができるのであれば、シンプルで骨太な彼の言葉は思考を展開するのに便利なものとなる。忙しい世の中にあって、自分が考えるべきことをスピーディーかつ深く考えることを助けてくれる。

2013-02-17

You can be nice

交渉において陥りがちな誤解に、「交渉相手は叩くべき敵である」という発想がある。敵=警戒すべき、隙を見せてはいけない、笑ってはいけない、一歩も譲るなかれ、etc.

しかし、自分は、この発想は必ずしも有効ではないと思っている。


2013-02-13

責任逃れのすすめ

最近行き帰りにiPadで読んでいる"Power Negotiating"という本が面白い(→リンク)。

交渉論の総論というよりは、基礎を一通りさらった人・仕事等で交渉の経験がある程度ある人向けに、きわめて実際的なtipsを数多く伝授するという本で、読者は多くの章に「そうそう、確かに」とうなずき、残りの章に「なるほど」と納得すること請け合い。基礎スキルをすでに持っている人が技の引き出しを増やすためにはうってつけの本だと思う。
(※初心者がいきなり読むには、やや実際的過ぎる印象はあるが)

ここではその一章にある、「交渉の場に、最高責任者を投入しちゃだめ」という考え方について紹介し、自分なりに検討してみる。


2013-02-07

老後資金

老後の家計設計について、頭の整理がてらメモ。

2013-02-02

基礎に立ち返る勇気

振り返ってみると、自分が「何かをうまく学べた」と感じたのは、浪人時の予備校時代が一番であり、その次がMBA留学中であった。

なぜそんなにうまく吸収できたのだろうか、なぜつまづきが少なかったのだろうかとなんとなしに考えてみたのだが、思うに、「恥を捨てて、基本的なところからきちんと勉強し直したから」というのが大きい気がする。

2013-01-24

日本人は交渉を根底から誤解しているのではないだろうか

留学先で最も楽しかった授業の一つであるネゴシエーション。ネゴの結果が成績に直結しているため、毎週毎週の同級生とのネゴシエーション演習はかなりシンドかったが、実に学ぶところの多い授業で、帰国後もっとも役に立っている感じがする。

このように自分は一時期みっちりとネゴシエーションのトレーニングを受けたので、実践力はさておき(さておくなよorz)、理屈はそこそこ理解しているつもりであり、日本に帰ってから散見される「その交渉術は、下手じゃないか?」というものがどうも気になってしまうのでメモ。

なお、交渉に関する定番本といえばGetting to Yesだが、それとは別に、交渉に求められる基本思想について概観されているこちらの教科書は本当に有益で、この発想を持っているだけで基本的に殆どの交渉を優位に進められる。


2013-01-19

戦略サファリ:批判は小気味いいが、でもやっぱり違うのでは

最近読んだ「世界の経営学者はいま何を考えているのか」に刺激を受けて、関連本と言える「戦略サファリ」を読んでみた。

ミンツバーグについては、以前「MBAが会社を滅ぼす」を読んだり、各種インタビュー記事などを目にしたりしていたので、その芸風(?)は理解していたが、本書も彼の主張が貫かれており、「ああ、ミンツバーグ節だな」と思わずにはいられなかった。

で、MBAを終えてこれからまさにその学びをどう使ったものか模索している立場から、このあたりについて思うところをメモ。


2013-01-18

行を削除したら表が壊れた...

よくこんなことがある:
  • コストの累計値を集計するようなスプレッドシート(図1)。
  • 高(t)のセルは、ひとつ上の行にある残高(t-1)セル+ひとつ左の列にある増減(t)で定義されている
  • ちょっとした誤記載などにより、ひとつ上の行を削除した
  • すると、数式における残高(t-1)部分が壊れて、エラー表示(#REF!)になってしまう(図2)
図1

図2

いちいち行を削除するたびに、#REF!となったところ以下の数式をオートフィルにより修正すればいいのだが、それも面倒くさい。そんなとき、どうすればいいだろうか。

2013-01-17

意思決定理論入門

意思決定理論入門(Link)

意思決定論の大家ギルボアがエントリーレベル向けに書いた教科書。文末に示す通りギルボアには意思決定に関する複数の教科書があるが、そのうちもっともわかりやすいもの。
この本を読むことで得られるSkill setについて概観してみた:

(追記)その後も意思決定に関して試行錯誤することが多かったので、この辺の議論を議論を自分なりに再整理してみた。そのリンクは以下の通り:

記事①

記事②

記事③

2013-01-16

Debt Capacity

借入能力についていろいろ。具体的には
・借入能力を決めるのは誰か
・借入能力を定める指標にはどのようなものがあるか
・そういった指標はどのように決まるか
について検討する。


2013-01-15

グラフカラーリングにおけるルール9つ (+5)

Databison経由で、チャートの色遣いに関する面白いコラムを見つけた。


画期的というほど目新しい情報ではないのだけれど、基礎がうまく整理されているように思われたので、その主要なメッセージだけメモしておく:

2013-01-14

温度計風グラフ

上が温度計グラフ。進捗率とか、「Yesと回答した人の割合」とか、そういったパーセンテージの表で使えるグラフ。ダッシュボードとかによく見る気がするし、たしか名著EXCEL Hacksにも掲載されていた記憶がある(→リンク)


感覚的な問題だが、下のような単なる棒グラフと比較して、「あとどのくらい必要か」というあたりがビジュアライズされる気がする。

作り方は以下の通り:

2013-01-13

9倍効果とサラリーマン

9倍効果とは

9倍効果とは、HBSのGourville教授により提唱されたコンセプトで、心理学に基づくもの。彼によると...


2013-01-12

EV/EBITDA再考

おそらく学校でバリュエーションを学ぶと、ほぼ間違いなく「Compsとしては、P/Eよりも、EV/EBITDAを使うのが良い」と言われると思う。色々理由はあって、
・特別利益・特別損失による要因を排除できる(一時的要素)
・固定資産やのれんの償却費など、支出を伴わない費用の影響を排除できる(会計的要素)
・金利負担による影響を排除できる(資本構成による要素)
と、いくつかの要素を比較対象から除外することで、より精緻にApple-to-appleができるという点が挙げられる。

で、自分も実際にEV/EBITDAを愛用しているのだが、使いつつも疑問があるのでメモ。

2013-01-11

ポストCAPMを狙うモデル達

CAPM

CAPM. 誰もがその限界を多かれ少なかれ理解しつつも、結局DCFの実務ではいまだにデファクトスタンダードとなっている(※)。

CAPMで問題になることの一つが、
「ベータだけではリターンの動きを説明しきれないじゃないか」
「その結果、CAPMでは、真の資本コストを過小評価(過大評価)してしまうのではないか」 
 という問題。その問題への回答となりうるモデルがいくつも提唱されているが、ここではその中で特に2つほど、実務に耐えそうなものを検証してみたい。なお、ベースとなる議論は、Arzac(2005)(→リンク)に詳しい。

※ デファクトスタンダードになっているかどうかという点については、Bruner et al. (1998)(→Link)とか参照


2013-01-10

買収時におけるのれんの取扱い

のれんについて、その会計・税務まわりに関するところのメモ。

<事例>

・A-Coが買収会社、T-Coが被買収会社。
・T-Coは、資産が時価80、簿価40。負債はない。
・想定する取引は以下の通り2ステップ。
     -ステップ1:A-Coは、T-Coを現金100で買収。
     -ステップ2:その後A-Coは、T-Coを吸収合併。
・単純化のため、株式譲渡とか新株発行とかを一律に『買収』、合併とか分割とかを一律に『合併』と呼ぶ
→このとき、会計上・税務上の取扱はどうなるだろうか?あるいは、結局のところ、のれんは損金計上できるのだろうか?


2013-01-09

さらば、VLOOKUP関数

エクセルにあたり避けて通れないVLOOKUP関数だが、個人的には不満があった。
その不満というのは、
「左から右に検索するだけじゃなく、右から左にも検索したい。。」
というもの。
その問題について、ひとつ解決策を考えてみた...

2013-01-07

ベータがゼロ・ベータが負であるということ

最近読んで面白かった本のひとつに、服部氏による『実践 M&Aマネジメントがある。

非常に面白いのだが、1点、「ネガティブベータの取扱」について、少し引っかかってしまった。

本稿ではその点について、少し書き散らしてみたい。

ベータがゼロであるということ・ベータが負になるということ


本書は、その辺のバリュエーション本がすっぽり手薄にしてしまっている実務面(交渉・税務・法務・会計まわり)をカバーしており面白い。

出版がやや古く改訂もなされていないので、会計制度変更や会社法施行に対応していないのが悔やまれるが、是非改訂が期待される。

ただ、ことバリュエーションというかファイナンスまわりの話については、色々と

「たしかに現場的なのかもしれないが、いくらなんでも理論的にサポートしきれなくないかしら?」

という議論が散見され、個人的にはかなりひっかかってしまった。今日はその中のひとつについて。

同書のバリュエーションの章でこんなことが書かれていた:

  • ゼロベータはまだ「配当=国債クーポン」とすれば説明がつくが
  • ベータが負の状態というのは、株主資本コストがリスクフリーレート以下ということであり、長期的に持続可能とは言えない

自分はこの言説、特にネガティブベータのところについて、「これほんと?」という疑念を強く持っている(確信を持てるほど自信はないのだけど。。).



2つの問題意識

まず第一に、現実問題ネガティブベータ銘柄は普通に存在する。

現実を理論-しかもよりによってCAPMという「理論っぽい何か」-で否定するというアプローチは、自分としてはどうも腑に落ちない。

第二に、この議論が依拠しているCAPMも、まあ理論というほど理論でもない。

本書はCAPMを前提として議論しているが、CAPMが一種の神話みたいなものでありその正しさ(正しさの度合い)は眉唾、というか検証もムズイというか不可能というか(実績値で推定はできるが期待値は観測不可能)。


仮にCAPMが正しいとしても..


で、自分の次の疑問は、
「仮にCAPMが正しいと仮定したとしても、上記『ネガティブベータはCAPMの観点からサステナブルでない』という発想はおかしくないか?」というもの。

これについての自分の現時点での意見は以下の通り:
  • CAPMが正しいと仮定するということは、市場リスク(Systematic risk)と非市場リスク(Idiosyncratic risk)のうち、非市場リスクは分散投資によりDiverse awayできると考えるということ
  • であれば、「非市場リスクはたっぷりあるが市場リスク(=ベータ)は負」という証券があれば、そういった証券のCAPM worldにおけるリスク価格はベータ(<0)となる
  • つまり、ベータがマイナスとなる証券は存在しうるし、そういった証券のリスクをCAPMに基づきリスクフリーレートより安く評価することも「CAPMが正しいと仮定するなら正当化せざるを得ない」
  • ここでCAPMをいったん忘れるなら、そういったネガティブベータアセットはおそらく非市場リスクが相応にあるので、mean-varianceというレンズで見ればきっとリスクフリーレートよりハイリスクハイリターンのところにプロットされる
といった感じ。

実務上のインプリケーション

以上により、自分は、仮にベータがマイナスの銘柄があっても、CAPMを使うと決めたなら、機械的にリスクフリーレートより低い株主資本コストとしてしまって良いのだと考えている。

ただ、別の議論として、ベータを調整すること自体は有用と思うので、Blumeの方式に従いベータを少しだけ1に近づけるという調整はアリだと思っている。

2013-01-06

オートフィル ショートカット

Alt → E → I → S.

これで右クリックからの卒業がまた一つ進む。


2013-01-05

数式が入ったセルの色を変えるマクロ

Macabucusで見つけたMacabucus Macroを試しにダウンロードしてみた。

http://macabacus.com/macros
(導入したのは無料のLite版)

2013-01-04

ブリッジグラフ (ウォーターフォールグラフ)

こんなグラフ。前期-当期間での損益増減分析とか、汎用性が高い。
下図では、前期利益100→数量減による減益▲50→価格上昇による増益+20→当期利益70という状況を示している。今日はこのつくり方について。



2013-01-03

ベータの調整

Bloombergで使われている「調整後ベータ」って何ぞや?という話。

なお、参照しているのはArzac(2008)(→リンク)
この手の「一段細かい話」を学ぶのには最適な教科書。

2013-01-02

グラフ作りの味方、Peltier Tech Blog

エクセルのグラフ作りにあたり、非常に役に立つページを見つけた:


主にエクセルについて、
  • 極力VBAを使わずに複雑なグラフを作ろうとする
  • でも奥の手としてVBAも使う
  • カラーリング等、見せ方についても細かい実例・Tipsが豊富
  • 一部の複雑なグラフ(マリメッコ等)については、作り方も載っているが、作成のためのお手製アドオンも販売している
というサイト。自分が気にいったネタをぱっと列挙すると...